ひとつの開催、ひとつのレースに明確な課題を持ってレースに挑む。小松崎大地はずっとそのスタイルを貫き通してきた。そして昨年11月に玉野でS級初優勝を達成、今年に入ると3月の千葉、岐阜で2場所連続完全優勝と波に乗っている。着実に進歩を続ける小松崎は、今年からGIステージに照準を定めた。
これからもラインを一番に考えていきます
四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスで活躍していた小松崎。一念発起して競輪界に転向、99期として2011年1月に宇都宮でデビューを果たした。その後は同年6月にA級2班に特別昇班、さらに12年2月にはS級への特別昇級をも決めた。
「はたから見ればものすごく順調だと思います。でも、自分の中ではいくつも壁がありました。そこを師匠の岡部(芳幸)さんだったり、先輩たちのアドバイスだったりをもらいながら、競走してきましたね」
一昨年、昨年と連続してヤンググランプリに出場。今期からは初のS級1班に昇格。さらにS級での優勝回数を積み重ねていくなどランクアップしていく中で、小松崎には常に心がけていることがあった。
「好調理由を最近は本当によく聞かれますが(笑)、何かを変えたとか、そういうことは全くないです。でも、今までやってきたことが少しずつ形になってきているかなというのは感じていますね。難しいことですけど、常にベストを尽くして、練習をしっかりやって、それで競走に臨む。そうしないと、反省や課題は出てこないと自分の中では思っています。練習をしないで競走に臨めば、練習していないから負けたという理由になってしまいますからね。準備をしっかりして、あとは毎回毎回、課題を持って走っています。今はそれが良い結果に繋がっているのかなと感じていますね」
そんな小松崎にとって、今年はターニングポイントと位置付ける開催が2つあった。まず1つ目は3月の和歌山FIだ。
「3月頭の和歌山FIは準決勝で負けたんですけど(9着4着2着)、あそこがターニングポイントになっていて、得たものがすごく大きかったです。あの開催での負けと先輩たちのアドバイスが繋がって、ちょっとだけ考え方が変わったかなと。言葉で表すには難しいですけど、あれからは勝っても負けても納得できるようになったんですよね」
今年2月の全日本選抜でGI初出場
小松崎にとって多くの収穫があった
確かに、その和歌山以降は2場所連続完全優勝に武雄記念での決勝進出と成績は急上昇している。そしてもう1つのターニングポイントは、2月に高松で開催された全日本選抜競輪だ。結果は4着8着8着8着に終わったが、実際で肌で感じたGIの舞台は大きな糧となった。
「GI初出場で、そこで得たものがすごく多かったですね。あのクラスに入っての、自分の立ち位置も分かりましたし、自分に足りないものもたくさん見えました。今までテレビでしかGIレースは見ていなかったので、『どうしてこういう仕掛けになるのだろう』、『あの動きをどうしてここでするのだろう』といろいろな疑問があったんですけど、走ってみたら、そこが繋がったんですよ。繋がったことで、普段からの練習でアプローチができるようになりました。こういったことも、成績が良くなってきた要因のひとつかなと思います」
常に課題を課して、その克服に努めてきた。そうした研鑚の末、今まで雲の上だったGIに初めて足を踏み入れ、その距離感を正確につかむことができた。
「今年の目標というかテーマは、GIを意識していくこと。GIを常に頭に入れながら、競走に取り組んでいますね。課題は毎回違うんですけど、意識するところはGIです。まずはGIの出場権を取らないと走ることもできないので結果も必要ですが、GIでしっかり戦うためにも、この1走はこうしよう、こうした走りをしようと考えています。でも、今は全てにおいて足りないところばかり。全体的にアップしていかないとGIは勝ち上がれないので、まずは底辺の底上げ、脚力アップですね。組み立てはレースで経験していかないとうまく走れない部分があるので、そのためにもしっかりとした準備をしないと」
もちろんGIは一筋縄ではいかない厳しいステージだが、デビューして4年目に突入した今、明確な目標とともに、高みを目指す気持ちは昂るばかりだ。
「いつまでも新人と言っているわけにはいかないですし、同じ舞台を走らせていただくラインの先輩たちにも迷惑かけてしまいます。それでは成長していく部分もないと思うので、人の競走も自分の競走以上に見ていますね。自分はまだまだですから。トップを走る選手との差をすごく感じているので、まずは準備をしっかりして、次はこうしてみようかなとか、こうしたらどこまで戦えるかなと毎回考えています。だからS級S班のトップと走るのは楽しみなんです。いつかは抜かないといけない人たちなので」
戦法面に関しても、今までこだわってきた「先行」にますますの磨きをかけていく構えだ。そこにはラインを大切に考える、小松崎の頑ななこだわりが見える。
「これからも先行が基本です。そこが無くなったら、自分はダメだと思うので。先行があるから戦えているし、自分も対戦相手もそういう見方をしていると思います。競輪はライン戦だということを、身を持って学んできましたし、ラインの強さを活かすのは先行が一番なので、そこにはこだわっています。独りよがりの先行は良くないですけどね。先行選手は、追い込み選手についてもらってなんぼだと思っていて、そういった意味でも、ラインを粗末にするレースはしたくないんです。後ろの人の責任も背負って走らないといけないし、自分一人の力では勝てないですから。自分の脚が特別に抜けていたら別かもしれないですが、僕はそういう選手ではないですし、ラインの強さで勝たせていただいたり、残していただいたりしている選手なので、これからもラインを一番に考えていきます」
6月には高松宮記念杯を走り、7月には寬仁親王牌への出場が決まっている。ビッグレースで大きな風穴を開けることができるか、小松崎の走りに注目が集まる。
「今年はGIを意識した競走をするということ念頭に置いて、取り組んでいます。競輪界はいろいろあって厳しい時期ですけど、その中でも北日本を引っ張っていけるように頑張りたいと思います。自分がやっていくことは変わらないし、一生懸命、精一杯頑張るので応援してください」
小松崎大地 (こまつざき・たいち)
1982年9月3日生まれ、31歳。身長182㎝、体重96㎏。在校順位は13勝で34位。練習は「朝はみんなで街道練習に行って、午後からはバンクに入ったりしてモガキですね。泉崎競技場で練習しています」
※身長、体重は6月4日現在の本人申告のもの。