今回のシューティング・スター・プレスは、特別編として短期登録で来日しているシュテファン・ボティシャー選手にクローズアップします。日本に来たことでさえ初めてというボティシャー選手でしたが、初参加となった日本の競輪では圧巻のレースを連発! 世界で活躍するそのスプリント力で、7月17日現在ですでに4度の優勝と大暴れしています。今後の目標とともに、日本の競輪の感想をお聞きしました。
(7月14日、小田原FIの前検日にインタビュー)
フィードラー選手のようなレジェンドになりたいと思います
-今回、初めての短期登録での競輪参戦となりましたが、ここまで4戦して3回の優勝と好成績を収めています。まずは、ご自身の評価をお願いします。
「初めてとしてはすごく上々だと思います。4場所を走って、4回ともファイナルに進めていますし、そのうち3回優勝できていますから、とても嬉しく思っています。これから先も、さらに勝ちを続けていきたいと思っています」
小田原前検日の指定練習の様子
-日本の競輪の研究はされてきたとのことですが、ここまで勝てるという想定はありましたか?
「全然、想像もしていませんでした。周囲のライダーの話では、調子の良い強いライダーでも3回か4回勝てれば良い方じゃないかと聞いていました。自分はライダーとして強いと思っていましたが、すでに3回優勝しているので、そこは予想外で、ここまでとは思っていませんでした。とても幸せに思っています」
-走りを見ていると、日本の競輪にすごくマッチしているように思いますが、その強さの秘訣は?
「特に秘密はないですね(笑)。でもレースをするにあたっては、競輪にしろ、インターナショナルのケイリンにしろ、シチュエーションを見る目と、レース全体を見渡す目、そして予見する目が必要だと思っています。自分には、神様からの思し召しか、両親のおかげで、それが備わっているんじゃないかと思っています」
-インターナショナルのケイリンとはルールが違う日本の競輪ですが、実際にレースを走ってみて、その点はいかがでしたか?
「かなり大きく違っていますよね。UCIルールでは蛇行や、他の選手と接触することはないですから。そのかわりハイスピードで進むところがあります。もし日本の競輪ルールでレースをやったら、カーボンフレームなど値段がとても高いので、みんなやっていけなくなるかもしれません(笑)。日本の場合は、必ずしも速いライダーが勝つとは限らないというのが面白さでもあり、難しさでもあります。ラインを形成するというのもかなり変わっていますね。日本に来て最初のレースでは、自分もルールに適応するのに戸惑いがありましたが、2戦目からアジャストできるようになりましたし、大丈夫でしたね」
-フランソワ・ペルビス選手は日本の競輪に参戦したことで、さらに世界でも強くなりました。ボティシャー選手も今回の参戦は競技でもプラスに働きそうですか?
「ペルビス選手の場合は4年目なので、結果がどういう風に反映されるかが分かると思いますが、自分の場合は今回が初めて。これからのワールドカップや世界選手権で、戦略など、どういう風に自分が強くなったか分かると思いますし、日本の競輪の経験が必ず活きてくるとは思っています」
-また、今回の来日で文化の違いなども楽しみたいとのことでしたが。
「そうですね。ほかの国の人々と出会ったり経験することは、後々の人生において視野が広がったり、異文化を理解することの助けになりますし、人として成長できると思っています」
-オフの日の過ごし方は?
「普通にトレーニングをするのがメインなので、そんなにオフの日がないのですが、普通に洗濯をしたり、ショッピングに行ったり、映画を見たりしています。時間ができれば、もちろん観光にもいきたいと思っています」
-ちなみにサッカーのワールドカップはご覧になられていましたか?(インタビュー当日朝に決勝が行われ、ドイツが優勝を決めた)
「イエス! ワールドカップ自体は4年に1度ですが、ドイツのチームが決勝に進むことは少ないですし、今朝は頑張って早起きして見ていました(笑)。(優勝は)興奮しましたね」
-日本の競輪、そして自転車競技においての今後の目標を教えてください。
「日本の競輪のゴールは、もちろんたくさん勝つことですね。あとはファンの皆さんに楽しんでもらうことです。インターナショナルでは、オリンピックでメダル、できれば金メダルが欲しいです。あとはワールドチャンピオンシップもたくさん勝っていきたいです。それとドイツでは自転車競技はそこまでメジャーではないので、そこをもう少しアピールできるようになったら嬉しいです。もうひとつ大きいことを言うと、フィードラー選手のようなレジェンドになりたいと思います。未来はオープンなので、先々結婚して、自分の家族を持てたらいいなとも思っています」
-最後に読者にメッセージをお願いします。
「レースをぜひ見ていただきたいし、エンジョイしていただきたいですね。そのためにも自分も良い結果を出したいと思います。ファンの方にサポートしていただいて、この喜びをともに分かち合えたら嬉しいと思います。ベストを尽くして、頑張ります!」
シュテファン・ボティシャー
1992年2月1日生まれ、22歳。身長184㎝、体重91㎏。2014年世界選手権スプリント2位、2013年世界選手権スプリント優勝。7月小田原の初日予選では上がりタイム8秒7をマークして、333バンクの日本最速タイムを約19年ぶりに更新した。