インタビュー

9月19日から23日に松戸競輪場で開催された第58回オールスター競輪。1着1着1着で勝ち上がり、初めての特別競輪優出を果たした竹内雄作に心境を語ってもらった。
思っていた以上に平常心ではいられなかったというオールスターの決勝についてや、彼がこれから目指すものなど。
力を出し切る。それが竹内の武器。
 先行で1着1着1着と破竹の勢いで勝ち上がっていったオールスターを振り返ってもらうと、竹内雄作からは意外な言葉が聞かれた。 「直前に、追加で岐阜記念が入って、(オールスターは)調整らしい調整が自分の中で出来ずに入ったので、不安が大きかったです。だけど、自分が思っていた以上の結果が出ました。毎日が手探りのような状態だったけど、その中で、決勝までいけたのは逆にプラスに捕らえることが出来たのは大きいですね」
 追加の岐阜記念からオールスターまで中6日と、調整が出来ない不安を抱えたまま松戸競輪場に入った竹内。だが、本人の不安をよそに快進撃は続いた。それは竹内自身の強さが底上げしている証拠だろう。

 竹内のレースを見ると、積極的な走りだが、目的をもって走っているのだろうか。
「それが自分のスタイルで、それが一番勝てる競走だと思っているだけです。逆に捲りでも勝てるようにならないといけないので、捲る展開になったらそれなりのレースをするというだけで、まずは自分の勝てる最善を尽くすというのが今の戦法なので。ただ自分が出し切れないで終わるのがイヤなので、出し切って終わるということをメインに考えて、あのようなレースになっていると思います」
 確かに、竹内が勝ち切れてない場合は力を出し切れていないレースが多い。
「そうですね。中途半端に終わることが多いので、またその、中途半端に終わらないように気持ちの面でも大きく成長してきたと思うので、そのような面に関しては良くなってきているのかなと思います」

第58回オールスター競輪決勝戦
記者インタビューの一コマ
 気持ちの変化となったきっかけは、岐阜記念だったそうだ。
「以前は参加するだけだったんですけど、常に上を見るということを意識するようにしているので、それが岐阜記念の頃からだいぶ変わってきたと思います。
 岐阜記念直前の四日市FIがすごく調子がよかったので、その調子のままいけるか不安だったんですけど、でも、地元記念で、それも追加だったので、最低、決勝にいこうと思いながら走りました。いつもは常に1レース、1レースを勝つことだけと思っていたけど、入った時に目標は決勝って高く持っていこうと思って、自分にもプレッシャーを与えて挑んでいたので、そうしたら、何と言うか、(走っていて)気持ち的に苦しくてもやめられないところは、やめられないので、そういう面に関しては変わったのかなと思います」
 その思いの基には偉大な先輩たちの存在が大きく影響している。
「地元を走るにあたって、自分が頑張らないといけないって、気持ち的にそう思って走りました。山田(裕仁)さんしかり、(山口)幸二さん、(山口)富生さんが、勝って当たり前だった時は、同じようなプレッシャーで戦っていたと思うので、だから、自分もそのくらいの気持ちを持って走れるようにということを意識していました。って、そんな偉そうなことは言えないんですけど(笑)。やはり自分の目標はその3人なので、早く近づけるようにと思っています」
 彼らが強かった頃は、岐阜が中部の中心という感じだったといっても過言ではなかった。
「今度はまた自分だったり、後輩、近い世代で盛り上がってきているなと思うので、森川大輔が同じ年なんですけど、彼もすごく成績よくて、それも自分にいい材料になっているというか、森川君は岐阜競輪場、自分は大垣競輪場で、いい刺激がお互いに与えられたらなって思っています。同級生とか近い存在が頑張っていると自分にも刺激になりますね」

 竹内にとって今の課題は何だろうか?
「ギアが軽くなって、スピードがある選手が勝っているイメージがあるので、自分の中でトップスピードが足りないというのは思うところが大きいし、トップスピードをあげて持続力をあげるというのが課題だと思います」

 オールスターの決勝でも、新田祐大に3番手に入られてしまったが、それを踏まえて、トップスピードをあげていきたい?
「いや、あれに関しては、全然、落ち着いたレースが全く出来ていなかったですね。ただ駆けただけで終わっている感じなので、それに関してはまだまだ、場慣れしていかないといけないのかなと思いました。トップ選手が走る中で自分がどう走るのかというのは、それこそ考えつつ、常に上を目指していかなければと思います。やはり、あの舞台で完成というか、自分では落ち着いて走っているつもりでも落ち着いて走れてなかったですね。
 直前までは全く緊張していなかったんです。敢闘門を出て、発走機に着くまでは大丈夫だったんですけど、レースが流れたら、焦ってしまったというか…。VTRを見たり、色々な人からアドバイスをもらったりした感じでは、もう少し落ち着いて自分の展開に持っていけば、なんてことはなかったんですけど…。新田さんが見えた瞬間に自分が踏み過ぎてしまって、結果(新田さんが)3番手に入られてしまい、一番後方に置きたい選手を一番楽な位置にしてしまった。そこに関して、もっと落ち着いていけばよかったと思います。新田さんがスンナリ3番手に入った時点で大塚(健一郎)さんは仕事するにも新田さんのスピードで、大塚さんを活かすレースも出来てなかった。結果としてすごく迷惑をかけたなと思っています」
 次に決勝に乗った時は落ち着いて走ることが第一の課題になりそうだ。
「そうですね、落ち着いてレースに臨めるように。特別の決勝にもっと乗れるよう向上心を持っていきたいので。そう簡単な道ではないと思うんですけど、常に上を目指していないと、いざ、その舞台に立った時に落ち着いて走れないでしょうからね」

準決勝戦を走る竹内雄作。
 練習について聞いてみた。
「幸二さんに紹介してもらったトレーナーさんに2、3年くらいお世話になっていて、身体的なトレーニングはそのトレーナーさんにお任せして、あと、それを自転車につなげるかは自分次第なので、トレーニングをどう自転車につなげるかを意識してやっています。朝、街道練習に行って、午後は競輪場で練習って感じです。練習自体はそんなに変わってはいないんですね」
 それは結果的に出てきている?
「そうですね。ただ、練習していて調子があがっていると効果が出ているって思うんですけど、レースが詰まっていて、練習が出来ない時期があると何か考えないといけないんですけど、それがなかなか難しいところでもあって、ピークを上手く持っていけてないっていうのはありますね」
 色々なことを考えながら練習に臨んでいるのだろう。
「いいものがあれば試して、考えながらやる方だとは思います。考えながらやらなければいけないと教わったので、普通にやらされているだけじゃ、ダメだって言われていたので」

 これからの目標は、「さらなる高みを目指していく」ことだ。
「オールスターで決勝に乗れて、それがマグレじゃないように、何回も乗らないとマグレと言われてしまうので、しっかり続くようにしたいですね!」
 それはもちろん先行で。
「まだまだ先行で頑張っていくので、応援してください!!」
 竹内の強力な先行力は、見ている方がワクワクしてくる力強さがある。これが気持ちと走りの噛み合ったG1決勝戦を見せてくれるのもそう遠くはないだろう。
竹内雄作 (たけうち・ゆうさく)
1987年9月29日生まれ 身長165cm 体重75kg。「4日間先行と考えた時に、やはり練習でこなしてないと、もたない部分があるので、先行する時に練習量がものを言うと思うし、それが噛み合えば、どんな展開でも勝てるだろう思います。でも、逆に噛み合ってないとそれが不安材料になって、出なければいけないところで出られないと思うので、そういうところは考えていこうかなと思います。自分の反応を感じながらということは最近意識してやっていますね」