インタビュー

2016年初のGI・第31回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)を制した渡邉一成。
ついに念願のタイトルの栄冠を手にした渡邉。ナショナルチームの活動も12年目となった、その両立の難しさや、また、これからの目標などを語ってもらった。
北日本を盛り上げていけるように頑張りたいと思います
「すごく嬉しいですし、何回GIの決勝戦に乗っても手が届かなかったので、本当に嬉しいです。この結果は北日本の先輩、後輩、全てのおかげだと思っています」
 渡邉一成の夢の一つはついに叶った。2月11日から14日まで久留米競輪で行われた第31回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)、2016年初のタイトルホルダーになった。
「初日、二次予選も、準決勝も思い切りよく走れたのが一番の結果につながったんだと思います」
 体調もよかった今開催は、チャンスはあると渡邉自身思っていた。
 そのチャンスは、さらに決勝戦に北日本4人、新田祐大・渡邉・佐藤慎太郎・菊地圭尚がそろうという好機に後押しされた。

渡邉一成 福島・88期
 決勝戦は、脇本雄太を先頭に稲垣裕之、村上博幸の近畿ライン、近藤隆司と岩津裕介が単騎、そして北日本4車の戦いだった。
 レースは、新田が前を取り、残り2周から脇本が前に出て先行。新田は一度引いて、最終ホーム前から巻き返していった。稲垣が牽制するが、新田はそれを避け、稲垣が落車のアクシデント。そこからは北日本の3車の勝負になったが、追い込んでいった渡邉が優勝を決めた。2着は佐藤、3着に新田で、福島の上位独占となった。
「新田君が、前受けから、タイミング次第で突っ張れれば、突っ張りますし、そうでなかったら、いいタイミングで行くっていう最初から作戦でした。(レース中は)僕は、新田君の後輪しか見てなかったです。どういう風な展開になっても、新田君なら必ず力を出し切ってくれると信じていたし、後ろもしっかりしていましたし、迷うことなくついていました」

 渡邉と新田、競輪界でもナンバー1、2のダッシュ力をもった2人。
「そこを活かして、上手く北日本を盛り上げていきたいです。今後、平原康多さん武田豊樹さんのラインのような関係になっていければいいなと思っています」
 北日本の選手や、88期が、どんどん優勝している間、渡邉はどんな気持ちでいたのだろうか。
「悔しかったです。GIの決勝戦に乗れても、表彰台は遠かったですし、優勝も遠かったので、…自分はずっと獲れないんじゃないかなとも思ったりもしましたけれども、新田君が心強い走りをしてくれたので、その結果、今回獲れたと思います。自分の順番がいつか来るんじゃないかって、ずっと思っていたけれども、でも、そう思っている内は獲れないんだなって痛感しました。タイトルは自分で獲りにいかなきゃいけないんだなって思いました」

 渡邉を支えてくれたモチベーションは何だったのだろうか。
「自分は競輪選手としてデビューしているので、ずっとトップを目指して走っていましたし、まずは支えてくれているファンの方だったり、妻だったり、家族だったり、北日本の先輩、後輩、皆の存在がありました」

 また、渡邉といえばナショナルチームの一員として、世界で長く戦ってきた。今年3月に行われる世界選手権で12回目の出場になる。
 その渡邉に競技と競輪、その両立の難しさを聞いてみた。
「まずは自転車の機材の差が大きいですし、日程をしっかり取ることも出来ないしですね。でも、その中で昨年、新田君がタイトルを2つ獲っていたので、それを目指して、『自分も獲れるんだ』って自分に言い聞かせて走りました。本当に世界の自転車競技で1番を取れる脚があれば、日本の競輪でも勝てると思っていたので、その結果として証明出来たのがすごく嬉しいです」
 その12年間、一度も競技から離れずにいたのは渡邉だけだった。両立の苦しさを誰よりも痛感しながらも、それでも、渡邉は頑張ってきた。
「ここ1、2年は身体も思うように動かなかったですし、結果を出すことが出来なかったけれども、必ず何かにつながると思って、腐らずにやってきた成果が今出ていると思います」

 しかし、現在、リオオリンピックの出場権は赤信号が点滅している状態だ。
「正直、個人種目は絶望的ですし、チームスプリントも厳しい状況ですけれども、まだチャンスはあると思うので、精一杯チャレンジして、努力してきた成果を出したいと思います」
 オリンピックにチームスプリントで出場するには、ロンドンで行われる世界選手権で結果を出すしかない。
「足らない部分と勝負しなければいけない部分が明確に見えているので、そこを集中的に鍛えて、世界選まで時間は短いですけれども、万全な状態で臨みたいと思います」

 競輪での渡邉の目標も聞いてみた。
「グランプリも決まったので、思いっきり自分の持ち味を出して、北日本にチャンスをもっと作っていきたいです。僕は、グランプリはタイトルを獲って出るものだと思っていたので、すごく遠くにあるものでした。でも、1回獲ると、あっけないなって思うところもあります」
 タイトルを取り、その先のグランプリまでやっと見えてきた。

「今年初のタイトルを獲り、SSの次に責任ある立場になったと思うけれども、それをしっかり胸に、北日本からどんどん優勝者が出るように、練習していきたいと思います。まだまだ自分の力はこれからだと思っています。北日本を盛り上げていけるように頑張りたいと思うので、応援よろしくお願いします!」
 真っ直ぐ目標に向かって進んでいく渡邉。今年の彼からは目が離せそうにない!
渡邉一成 (わたなべ・かずなり)
1983年8月12日生まれ。身長176cm、体重80kg。
ナショナルチームに入ったきかっけは「アテネオリンピックを見てですね。アマチュア始めてから、もともと(競技は)好きでしたけれど。本当に現実的になったというかは、アテネオリンピックを見てからですね。身近な人がメダルを獲ったので」