インタビュー

2016年3月8日から13日に名古屋競輪場で行われた第69回日本選手権競輪(GI)、それを制したのは村上義弘だった。
この優勝で、日本選手権最多優勝、最年長記録、名古屋日本選手権3連覇を成し遂げた村上、彼にこの戦いを振り返ってもらった。

近畿の絆で村上義弘が日本選手権4回目の優勝を飾る
日本選手権最多4回優勝(吉岡稔真とタイ記録)、ダービー最年長記録、名古屋で開催された日本選手権3連覇を達成した村上義弘。
「何度、優勝しても夢のような気持ちです。記録は、あまり意識はしてないんですけど、日本選手権というレースは競輪選手にとって、大きな夢の一つだと思うので、また、このタイトルを獲ることができて本当に光栄に思っています」

村上義弘 京都・73期
「年明けから、個人的には、あまり調子はよくなかったんですけど、日本選手権に向けて調子もよくなってきていました。
 今開催は本当に好調な近畿の選手はいなかったように思うけど、その中で強い選手を相手に力を出し切ってという気持ちが出ていた開催だと思います。
 今の近畿地区はすごく心の奥で繋がっているところがあると思いますし、また個人、個人が自立した選手として素晴らしい考えをもった選手ばかりなので、本当に普段からそういう選手たちに負けないようにと思って頑張っています」
今開催の近畿地区の流れを村上はそう表現した。好調だった選手たちはたくさんいる。だが、近畿地区の選手の絆の強さが勝った。
「決勝戦、相手が本当に強かったので、(三谷)竜生は、最初、『先頭で頑張る』って言ったんですけど、経験は自分の方があるので『自分が先頭で』という話もしたけど、『どうしても前で頑張りたい』と竜生が言うので、その気持ちがすごく強く、自分たちが思っていた以上に出たのだと思います。
 竜生の練習の厳しさを知っているので、竜生が本当に強いのは知っているんですけど、それ以上に打鐘のピッチが早く感じて、後ろを振り返る余裕はあまりなかったですね」
と、三谷竜生の強さ、気持ちの強さを賞賛した。
決勝戦は、スタートを新田祐大が取り、並びは新田祐大-岩津裕介、竹内雄作-深谷知広-金子貴志、三谷竜生-川村晃司-村上義弘、野田源一で落ち着く。残り3周からゆっくりと三谷が竹内を抑えながら上昇し、赤板から全開で先行。最終ホームで竹内が捲っていくが、川村が番手から出ていき、また、村上が竹内をブロック。最終バック過ぎに新田、深谷も捲ってくるが、それも村上がブロックした。
「まさか、あそこまでハイピッチなレースになると思ってなかったですね。相手も強いので、どこかでモツれるところが出てくるだろうとは思ったんですけど、もうそういうレースにはならず、竜生が一本棒で打鐘を聞かせてくれました。そこからは、しっかり自分の仕事をしようと思っていました。本当にもうハイピッチになったのでみんな苦しいレースになったと思います。
 竹内(雄作)が来た後に、新田が見えて、深谷が見えて、とにかく晃司が踏み続けている以上は、とにかくそれを自分が止めにいこうと、そういう気持ちだけでした」
新田、深谷を止めにいくと、空いた内に岩津が入ってきたが、今度はそれを、また村上がそれを締める。
「内には誰か入ってくるだろうとは思っていました。最終4コーナーをしっかり(川村)晃司を先頭で回らすことが自分の仕事だと思っていたので、それが出来たと思います」
最後の直線は、川村、村上、岩津、野田、そして、外を伸びてきた新田の勝負になったが、最後のデッドヒートを制したのは村上だった。
「…もし自分が勝てない時は、(川村)晃司に優勝して欲しかったし、たまたま内を締めた時に頭が引っかかったというか、それで一伸びしたような感じでしたけど、最後は、自分の脚自体はいっぱいでした」
そして、名古屋競輪のファンの大声援を受け、それにガッツポーズで応えた。
「この日本選手権は自分の中で大きな目標としておいていますけど、この年齢になって、大切なのは目の前の1つ、1つをどれだけファンの皆さんに納得してもらうか、自分自身も納得出来るかが大切だと思うので、これからもレースも練習も、日々を大切にして頑張りたいと思います」
本人自身、年々、年齢の壁は感じるという。だが、見る者には全くそれを感じさせない魂の走り。村上がファンの声に応えてくれる限り、ファンもきっと彼への応援の後押しを辞めない。
そして、ダービー決勝戦で見せた、あの熱い走りは、いつまでもファンの心に強く残ることだろう。
村上義弘 (むらかみ・よしひろ)
1974年7月6日生まれ。身長170cm、体重76kg
最近の練習方法は「年々、スピードが落ちてきているので、スピード練習を中心にやっています」
自転車好きは健在で「冬は息抜きがてらマウンテンバイクに乗ったりしています。以前から、冬場は遊び程度に近所の山で乗っています。年々、年齢はどうしようもないことですけど、そこに当たった時とか、
               その中でも基本的には自転車が好きなので、散歩みたいなものです(笑)」