インタビュー

木暮安由の魅力といえばトリッキーな動きがその1つだろう。それを大きな舞台でもっと見たいと望んでいるファンも多いはず。近況の調子の良さを見ると、今年はやってくれそうな期待が高まる!

自分の身体に敏感でいたいなって思っていますね
「最近は、1着も多くて、FIでは優勝もしているから、あとは、記念の方が準決勝が上手くいかず決勝に乗れていないので、そこは残念だと思います。
(勝率がいいのは)本当にたまたまですよ(笑)。でも、自転車の悩みが少ないので、それが好調の秘訣かなと思いますけど」
 近況の調子について聞くと木暮安由はそう答えてくれた。

木暮安由 群馬・92期
 悩みが少ないというのは自転車についてだろうか、それとも体調?
「やっぱり体調が一番だと思いますね。体調で自転車のセッティングも変わるので、日々のケアを大事にしていることが成績につながっていると思います」
 ケガに泣かされることが多かった木暮、体調が整えば自分本来の力が出せる。本人はたまたまだと言ったが、これは彼本来の強さだろう。
 目標は? と聞くと、淀みない声でこう答えてくれた。
「やはりGIの決勝で表彰台に立ちたいので、そこを目指して毎年やっています。
 あとは一戦、一戦、FIでも、1着を取る回数を多くして、お客さんから買ってもらえたらいいなと思っています」
 そのためには、どんなことを心がけているのだろうか。
「日々、自転車につながることを考えて、トレーニング等して、身体の調整というか、いつもパフォーマンスをよくするために身体のケアは毎日したいと思っています。
 何というか、自分の感覚を鋭くするような、ケアというか、今日1日やるぞっていう朝起きた感じの、そういう気持ちを毎日続けられるようにするのがいいのかなと思いますけど」
 自分の感覚を毎日見つめ直す、それは簡単そうで難しいことだと思う。毎日のことだからこそ難しい。
「そうなんですよね。だから、毎日、やる気が出るようなことを日々考えて、自分がやりたいことを日々やっている感じですかね。まぁ、難しいところですよね」
 そうすると練習方法も変えたりするのだろうか?
「いや、基本的に毎日同じなんですけども、やっぱり日々体調は違うから、疲れているという振り幅を少なくするということをして、身体に敏感でいたいなって思っていますね」
 この自分の感覚に敏感ということは、木暮にとって大事なキーワードだと思う。その感覚を大事にしているからこそ、レースでもトリッキーとよく評される動きが出来るのだろう。
 木暮のトリッキーな動きは、考えてというよりもその場で反応しているのだろうか。
「身体が動くのが一番だと思っています。考えて動くとワンテンポ、ツーテンポ遅くなっちゃうので、考えるより脚が動く方が勝てるんじゃないかなと思います」
 名古屋ダービーで武田豊樹、川崎記念で平原康多の前を回ったが、その気持ちは?
「うーん、平原さんとか武田(豊樹)さんとか、先行して、後ろを連れていく競走が多いじゃないですか、そういう男気っていうのが、そういう、あの人たちの前を任してもらえるなら、そういう男気を自分も見せてみたいなっていうんですかね。先輩たちが頑張っているので、自分が次は頑張りたいなっていう気持ちも中にはあります。
 先輩たちは強いので、前を回らせてもらうことも光栄だし、それを自分の力に変えて、今後につながっていくと思うんですよ、あの緊張感とか(笑)、緊張しますよ。けど、それは自分の力には絶対になるので、その緊張感と、競走内容とか、テレビを見ていると絆を感じるので、そういうのがすごいと思って、自分もその中の一員になれたら嬉しいなと思い、頑張っているんですけど」
 関東といえば、吉田拓矢や鈴木竜士と若手の台頭も目立ってきたが、後ろを回ることについては思っているのか。
「後ろを回ることがあれば回りたいなって思います。もう前を任したからには、後ろで援護して、負ける時は共倒れでいいと思って、そういう気持ちでいきます」
 木暮にとってラインとは?
「ラインはあった方がいいですよね。単騎で走る時もあるんですけど、後ろについてくれる先輩たちが、自分のためについてくれると自分も力になるし、頑張ろうという気持ちも沸いてきますよね。
 自分は絶対に後手を踏まないようにしているので、それで、任せてついてくれるなら嬉しいですね」
 単騎の木暮もトリッキーさに拍車がかかり魅力的だと伝えると、
「ありがとうございます。でも、強くないとついてくれないでしょう(笑)。一時期、調子がよくなかった時に、いつもついてくれる人がついてくれなかったので(苦笑)」
 と、ラインが出来ず、ちょっと悔しいと思いをしたことを話してくれた。その後に言った言葉が印象的だった。
「でも、やはり皆勝ちたいですから、そこは皆プロなんでしょうがないです」
 そう言い切れるのは、木暮の気持ちの強さだと思う。悔しさを悔しいという感情のままでおかず、しっかり真正面から受け入れたからこその言葉だと思うからだ。
 ファンへのメッセージを聞くと
「100円でもいいので買ってください!」
 と、ひと言くれた。「オッズを見て、赤くなっていると嬉しいですもん」と、人気になることも木暮の力に変わるそうだ。
 インタビューを終えて思ったのは、どこか掴みどころない木暮だが、芯の強さを感じた。今はまだ好調ではあるけど、木暮の絶好調ではない。もっともっと木暮らしい強さを競走で見せてほしい。
木暮安由 (きぐれ・やすよし)
1985年2月23日生まれ。慎重185cm、体重83kg。
趣味は?「自転車を眺めていることですかね。ここをこうすれば自転車がもっと伸びるんじゃないかとか、あとは自転車屋さんで話して、こうしたらどうですかねって話している時ですかね。あとは、(開催中に)風呂で自転車のことを話すとか楽しいですね」