インタビュー

吉田敏洋が絶好調だ!!冴えわたる捲りの切れ味は増しており、地元で開催される高松宮記念杯が非常に期待される。
また、5月に静岡競輪場で行われたダービーで決勝2着に入り、賞金ランキング4位(5月31日現在)で、このままいけば年末グランプリも見えてきた。
そんな吉田にこれからの意気込みと、中部ラインのことなどを話してもらった。

僕の調子がいつまで続くかわからないですけど(笑)
 「3月の名古屋ダービーに向けて、年明けからそこに向けたトレーニングをずっと続けていて、正直、名古屋ダービーでは思ったような成績は残せなかったんですけど、でも、その後も気持ちを切らすことなく、次に6月に高松宮記念杯が名古屋でもう1回あるので、継続して、いい形でトレーニングしている成果出てくれているのかなって思います。
 あとはプラスアルファでしかないと思うんですけど、4月の終わりの西武園記念から、新しい自転車を使っているんですけど、それが今の自分の体調とマッチしてくれているんじゃないでしょうか」
 吉田敏洋に好調の理由を聞くとこう話してくれた。

吉田敏洋 愛知・85期
 「例年通りなら、だいたい名古屋記念が3月にあるので、そこに向けて練習の量も増やしていく感じなんですけど、そこで気を抜くわけではないけど、一旦あぁ終わったなとなる感じの時もあったと思うんですけど、今年に関しては、3月のダービーが終わっても、もう1回高松宮記念杯がありますからね。モチベーションとしても、春から自分の状態がグッとあがっている手応えもあるので、なんとしてもという気持ちが強くなっているのは確かですね」
 地元でビッグレースが2回あるというのは、大変そうだと見ている側は思ってしまうが、逆にそれが吉田にとっては強いモチベーション維持につながったようだ。
 高松宮記念杯への意気込みを聞くと面白い答えを返してくれた
 「地元の名古屋を走る時は、FIだろうが記念だろうがGIだろうが、同じ感じで入るんですけど、5月の静岡のダービーを決勝2着という形で終われて目に見えて違うことっていうのは、これからあと半年くらいありますけど、年末に向けてそういう勝負に自分が入っていくのかなっていうのはあります。こういう気持ちっていうのは初めてのことなんですけども、チャンスがきたということはあきらかなので、どういう風にレースに影響するのかはまだわからないし、数字的なことを意識するのはあんまり好きじゃないんですけど、でも、そういうものと自然と向かい合っていかないといけないのかなっていうのはありますね。まぁ、今までもこれから先もあまり変わらないのは、目の前のレース1つ1つをしっかりと走っていくっていう、それだけですね」
 今、中部勢が盛り上がっている。特に自力選手たちの勢いがすごいが、例えば先行選手が同じレースに同乗した場合は、前後というのはどうやって決めるのだろうか。
 「深谷(知広)や竹内(雄作)、浅井(康太)らと一緒の時のことだと思うんですけど、彼らと一緒のレースになった時は、自分の気持ちももちろんですけど、一緒になった彼らの気持ちをまず確認したいかなっていうのはありますね。たぶん、名前を出した3人のうち、深谷、竹内は僕の後ろを回る選択肢はないと思うので(笑)、最近の中で一番目立つのは浅井との関係だと思いますが、そこも、例えば西武園記念の初日なんかは浅井が自分からやらしてくれっていう話を僕の方に言ってくれたので、僕としても断る理由はないし、前回ってくれって感じでした。たぶん、浅井にしても僕がこんな風に調子がよくなってくるとは予測してなかったのかもしれないですね、その後の平塚記念とかでも連携したんですけど、こういうことは今までにあまりなかったケースなんで、これから考えていかなきゃいけないのかなっていう、いい意味でも悪い意味でも戸惑いみたいなのは感じるんですよ、浅井の中に。自分は深谷や竹内みたいな徹底先行先取じゃないので、自力というか自在なので、だから、なんというか浅井の方が僕に気を使っているんじゃないかと思います。当然、僕の前を回るならということも考えていると思うので。だから僕も同じようにどういう風にしていこうかなって、その時、その時で考えればいいかなって感じで。一番はやっぱり同じレースを走る他のラインがイヤだなって思うような並びになればっていう風に思います」
 それが出来るのは中部の強みだろう。
 「はい、大きな武器になっていくと思います。まぁ、僕の調子がいつまで続くかわからないですけど(笑)、このままいけるとしたら、浅井-吉田の並びもあれば、吉田-浅井の並びもっていうのも、相手がそれによって色々と考えなきゃいけないような状況になれば、僕らにとっても大きいかなと思います」
 益々これからのビッグレースでの連携が楽しみになりそうだ。だが、ここに至るまでの苦しかった思いも吉田を奮い立たせてくれたものなのだそうだ。
「…今まで一番自分が悔しかったのは、自分の調子があまりあがっていなくて、GIなんかでもただ出るだけという感じが続いた時もあったんですけど、そうすると決勝戦に深谷や竹内や浅井の後ろに中部ではないマーク選手がついたり、それを僕らは帰り支度をしながら指をくわえて見ているだけっていうのが、それがすごく悔しかったし、歯がゆいというか、『何をやっているんだ、俺たちは』…っていう乗っていない中部の選手皆で悔しい思いをしていたっていうのが、ここまで頑張ってこれるという、モチベーションを高める要因になったかなと思います。
 今、全国的に見ても中部が一番自力選手の格がしっかりしていると思うので、なんとか皆で頑張りたいですね。僕の場合は最初から一緒になるのは難しいので、たぶん、予選スタートだとしたら、自分の力で一次予選、二次予選をクリアして、そうしたら、準決勝は誰かと一緒になると思うし、そういうところで連携するチャンスが増えてくれば、もっと自分にもいい追い風が吹いてくると思うので、頑張りたいですね」
 その中で、今も吉田が自力で頑張っていることが、強みにもなっているだろう。
「そういう風になるんですかね。深谷、竹内、浅井とか、彼らに与える印象も違うと思いますからね。僕が勝ち上がっていった時に、一緒になった時の彼らの責任というか、そういうものっていうものも、また違うはずだし。そんな僕自身がプレッシャーをかけているつもりはないんですけど(笑)、深谷よりも僕の方がバック本数多いはずなので、厳しく言うつもりはないけど、そんなら前で俺がやろうかっていう準備はいつでもしているつもりだし、竹内や深谷と一緒になったとしても、あいつらが甘いことを言っていると僕が感じるんであれば、だったら、俺が前でやるぞって言う気持ちではいるので、そういうことが彼らにプラスになっていけばいいなと思うんですけどね。特に深谷なんかは気持ち的に弱いなって見える部分が、ここ2年くらいあるので、なんとしても彼に強かった時に戻ってほしい。いや、今でも強いんですけど、もっと、皆が強いって思っている時の調子に戻ってほしいので、そのためにも甘やかしたくないって気持ちがありますね」
 それは中部の先輩たちの姿を見てきて吉田が感じてきたことを、今、実践しているのだろうか。
「そんな偉そうなことを言うつもりはないんですけど(笑)。でも、やっぱり、20代とか若い頃に、引退された山口幸二さんとか山田裕仁さんとかに一緒に走っている時に教えてもらったことがすごい今活きているかなというのはありますね。
 なかなか若い子に伝えるのは難しいんですよね。口で説明するのは難しいので。そうなると、僕もまだ多少動けるので、レースの中で、こういうことなんだっていうことを見せていくのが一番説得力があるかなと思うので。口でばかりいっても、こいつ出来もしないのに偉そうなことばかり言いやがってって思われたくないですし、自分で言ったことをしっかり自分でも実践して、こういうことだぞって彼らがしっかりわかってくれるまで、やっていくのも年長者の役目かなと思っています」
 調子のよさだけでなく、その責任感や気持ちが、さらに吉田を大きくしていることを感じる。
 ファンへのメッセージを語ってもらっても強い気持ちがそこから伝わってくる。
「30も後半にさしかかっていますけど、まだまだ若いヤツらには負けないっていう自信もありますし、目の前のレース一戦一戦を常に全力で、これからもまだ当分自力で戦っていきたいと思います、なので、勝ち負けもそうですけど、そういう戦う姿も見てもらえれば嬉しいですね」
 今までと違う勝負に挑む吉田がどんな走りを見せてくれるか、とても楽しみだ。
吉田敏洋(よしだ・としひろ)
1979年10月17日生まれ。身長170cm、体重90kg。
 好きな時は「騒ぐのは好きなので、仕事終わって、地元に帰ってきて、その日だけはお酒を飲んだりするのは楽しいですね(笑)。月に2、3回くらいの話ですけど。そこで、先輩や後輩と色んな話が出来るんですよね。若い子達と食事して、当然、飲みますけど、そこで色んな話も聞いてあげられるし、自分の考えもそういうところで話すことも出来るし、コミュニケーションは取れる場かなととらえています。
 中部の選手ってすごく仲がいいんですよ。だから、いい意味での伝統じゃないですけど、山口幸二さんたちと一緒に特別を走っていた頃は帰ってきて、先輩たちとお酒を飲んでいたのを、僕1人でもやっていますけど(笑)。他の地区の人に聞くと、そういうのってあんまりないみたいなんですよね。僕はそういうのが好きだし、大事だと思うんですよね。
 でも、若い子たちはかわいそうだなと思うのは、A級デビューしたての子とか、10年、15年前よりも、ちょっと賞金が格段に下がっているわけで、レースが終わると寂しそうな顔でしゅっと帰る子たちが多いんですよね。それはそれで止める理由もないですけど、でも、例えば、それは僕たちが連れていってあげて、上位の選手たちの走っている舞台で、それが終わったら、こんなに楽しいんだぞって、そういうのも伝えるのも僕らの役目かなと思います。そうやって上を目指す気持ちをもってもらわないといけないですからね」