インタビュー

小川祐司 愛媛 96期 S級2班
ケガから復帰し、原点に立ち返る決意
 12月6日の福井・S級シリーズ2日目に珍事が発生した。7RのS級一般戦は発走直後、急に雪が強くなり、みるみるバンクが真っ白に。2周半に差しかかったところで競走中止を告げる鐘が打ち鳴らされた。「前も見えないし、走路も滑って危なかった。こんな状態じゃ走れるわけがない」と、走っていた選手はご立腹だったが、唯一「最後まで走りたかった」と漏らした選手がいた。それが小川だった。

小川祐司 愛媛・96期
 9月25日の防府記念最終日8R、中団で牛山貴広(茨城)と並走になった際、押し上げを食らって転倒。左の肋骨を3本折る重傷だった。「選手になってからは初めての大けがでしたね。体ももちろんだったが、ようやく感じがよくなってきたところだったので、心のダメージが大きかった」。そこから2カ月半、ようやくこの福井で実戦復帰。初日はまったく見せ場なく敗れて「先行くらいはできると思っていたが…。甘かったですね」とさらに意気消沈。それでも「3日間で何とかきっかけをつかんで帰りたい」と、ファイティングポーズを崩すことはなかった。それだけに、突然降り出した雪が一層うらめしかったのだ。
 同志社大まではボート競技で活躍。身体能力の高さは競輪学校時代から注目されていた。09年、27歳でデビューしてからも順調に成績を伸ばし、昨年は平塚「ヤンググランプリ」にも出場(6着)。今年は7月弥彦「寛仁親王牌」でGI初出場も果たした。さらには、8月の豊橋FIでS級初優勝も経験。その1カ月後に、アクシデントが待っているとは…。
 けがをしたことで、あらためて自分を振り返る時間もできた。「年齢的な焦りはなかったはずだった。でもA級のころは、早く(S級に)上がりたくて勝つための競走しかしていなかったんですね。先行で脚をつくるようなレースをしていなかったツケが、今になってきているのかもしれません」。原点に立ち返る決意で臨んだ復帰戦。1走でも多く走って、早くレース勘を取り戻したかった。
 けがをして弱くなるのはプロじゃない-。輪界トップに君臨する武田豊樹(茨城)がよく口にする言葉だ。「武田さんも村上義弘(京都)さんも、けがを言い訳にしない。自分が終わった選手なら、このまま弱っていってもいいけど、ぼくはまだ上を目指しているので」と、再起を誓う。不運なことに最終日も落車棄権の憂き目に遭ったが、幸い軽傷で済んだ。けがをバネに、以前よりも精神的に強くなった小川の姿が、もうすぐ見られるはずだ。


福井競輪場より