インタビュー

「期待のホープが本格化」角令央奈 兵庫 98期 S級2班
目標は目の前の競走をしっかり戦うこと
 ようやく兵庫期待の大器が本格化してきた。3場所連続完全VでS級特別昇級を決めて、迎えたS級4場所目の岸和田FI。年頭2日の初日、狙い澄ましたかのような鮮やかな捲りで、勝ち上がりでのS級初勝利を上げた。「初勝利は通過点。自分がS級で戦っていく中での戦い方を見いだせた気はしますね」と大きな喜びはなかった。もちろん目指す地平はもっと高いところにあるからだ。

角令央奈 兵庫・98期
 高校時代からジュニアの自転車競技の世界では知られた選手だった。鹿屋体育大学に入学して、さらに日本代表に近づいた。トラックの中長距離競技かロードで世界を目指すか瀬戸際にいたが、結局選んだのは競輪レーサーの道だった。「まずはプロレーサーになって、競技も続けていけたらいいなぐらいの軽い気持ちだったんですよ。でも競輪の世界はそんなに甘いものではなかったですね」とチャレンジ、A級と競技の時のように頭角を現すことはかなわなかった。「だからこそ、一回バカになるぐらい練習をやってみようと思ったんです」。そこから師匠の松岡健介(兵庫)のマンツーマンの指導もあって、昨年の夏場から如実に結果が出た。松岡に進められたウエイトトレーニングも本格的に練習メニューに取り入れ、典型的な地脚に加えて課題だったトップスピードも付いてきた。「何よりも結果が出て競走が楽しくなってきました」と苦しんだA級を振り返った。
 デビューから昨年までは、逃げても、捲っても粘れなかった。自転車競技を始めてずっとエリート畑を歩んできた男の初めての挫折だった。「こんなはずでは、こんなはずでは…」ともがいた回り道は、今の自分につながっていると素直に思えた。だから大きな目標は持たない。「目の前の競走をしっかり戦う事ですね。この1年を通して『角は強くなった』と思ってくれるような選手になりたい」と話す。
 師匠の松岡とはS級2場所目の高知FIで配分が一緒になった。「決勝で一緒に走るのがひそかな目標だったけど互いに失敗してしまいました。まあ達成は、自分がもっと強くなってからでいい」。一度味わった挫折を糧に1歩1歩、強者の道を歩む決意だ。


岸和田競輪場より