インタビュー

三谷竜生 奈良 101期 S級2班
近畿地区にまた新たなスター候補生誕生
 底知れない可能性に、戦慄すら覚えた。1月28日に決勝戦が行われた松山競輪ナイターFII「松山競輪誕生記念レース」。ここまで年をまたいで名古屋、奈良と2場所連続Vで乗り込んできた三谷。S級への特別昇級がかかるとあって当然、今開催の注目を一身に浴びることとなったが、当の本人は緊張も重圧も、まったく感じさせない。堂々たる振る舞いは、すでに歴戦のS級戦士の風格をまとっているようだった。

三谷竜生 奈良・101期
 初戦の予選・10Rは6番手で周回。打鐘前から踏み込んで、くせ者の浅沼聖士(静岡)の牽制をものともせず、そのまま1周半押し切って快勝。強風もあって、上がりタイムこそ12秒0と平凡だったが、引き揚げてきた三谷はまったく息が上がっていなかった。「(バンクは)軽かった。踏み直しもできたし、思ったより楽でした。きょうは1周半行こうと決めていたし、長い距離を踏んでも脚に余裕があった」。勝って当然、とまでは言わなかったが、力の違いは歴然だった。
 6連勝を決めた奈良から、およそ3週間配分が空いたこともあり、1月16日から3泊4日で沖縄合宿へ出かけた。「父(典正・49期)と兄2人(政史・93期、将太・92期)で初めて4人そろって行ってきました。暖かいところでしっかり練習できた」と、手応えは十分感じていた。その成果を初戦から出せたことで、自信は確信へと変わった。中学から大学までラグビーを続け、関東学院大卒業目前に自転車を始めた。その年の8月「都道府県対抗」、9月の千葉国体・成年の部で1kmタイムトライアルでV。わずかなキャリアで全国制覇と、素質の高さを発揮してみせる。「(自転車に)乗り始めて早くにタイムが出たけど、(父、兄が選手という)環境でしょうね。誰よりも練習しているという自信はある」。デビュー後の快進撃を支えていたのは、やはり努力だった。
 続く2日目の準決勝・11Rは再び打鐘からの仕掛け。すんなりマークの鷲見逸喜(岐阜)を度重なる踏み直しで引きずり回し、ツキバテさせたのだから恐れ入る。風が前日よりもさらに強くなったこともあり、さすがにレース後は「キツかったですね」と漏らしたが、まったく危なげなく王手をかけた。そして迎えた決勝戦。やはり打鐘先行に打って出ると、小田倉勇二(栃木)の2角捲りを簡単に合わせて封じ、川野正芳(大分)の捲り追い込みをしのいでV。持ち味の踏み直しでレースを完全に支配、デビュー7カ月でA級卒業を決めた。躍進が続く近畿地区に、また新たなスター候補が誕生した。


松山競輪場より