インタビュー

「飛翔する時がきた」白上翔 滋賀 95期 A級1班
デビューから4年、ようやく見えてきたS級の壁
 寒風を引き裂いた。「自分の番が来たから行っただけ」と迷いなく打鐘過ぎから先行した。2月15日、京都向日町FIのA級決勝は、堂村知哉(福井)に地元の武田哲二-内山貴裕を引き連れて、完全に主導権を奪った。最終4角を先頭で駆け抜けたが、直後にスピードが落ちた。5番手の山本奨(岡山)が猛然と捲り追い込んで来ると同時に失速して5着に沈んだ。勝ったのは番手の堂村だった。

白上翔 滋賀・95期
 2009年1月デビューから4年余りが立った。ようやくS級の壁が見えるところまできた。「徹底先行にこだわってやってきたデビューから悪戦苦闘しながら、最近になってやっと自分の中で底力が付いてきたのかなあと思えるようになりました」と苦笑いする。「今は『絶対に先行』という気持ちはありません。1着を狙う競走を心がけてます。それが先行、捲り、差しと何でもいいと思ってるんです。決勝も地元勢が付いて4人だったけど主導権を取るだけの競走をするつもりはなかった」とレースを振り返った。
 高校まで野球漬けの毎日だったが、向日町の落車事故で運ばれる病院に勤めてた母の勧めで競輪の門をたたいた。しかし伸び悩んだ。先行で戦うのか、自在に立ち回るのか戦法にも迷いが出て競走得点も上がらないまま3年が経った。そんな時に競輪場で声をかけてくれたのが近畿の先輩・有馬雄二(奈良)だった。「オレでもS級になれたんや。お前ぐらい体力があったら絶対にS級になれる。なれんかったらサボってる証拠や」と激励を受けたのをきっかけに離れて練習をしていた師匠・渡辺一貴(滋賀)に頭を下げて指導を仰いだ。受け入れた師匠からは「もう1度、先行基本に戻せ」と中途半端な戦法もとがめられて結果が出始めた。「もう練習がサボれない状況に追い込めて勝てるようになった」と練習の裏付けが自信にもつながってきた。
 今年に入り4戦すべて決勝進出。2月の高知では前S級の東矢昇太(熊本)を破り優勝した。「今年の目標は年間を通じてS級の競走得点を確保すること。後は、目の前の競走で1着を取ることです」。勝利に貪欲になった湖国のホープが飛〝翔〟する時がきた。


京都向日町競輪場より