インタビュー

鈴木謙太郎 福島 90期 S級1班
存在感を見せつけた日本選手権での走り
 いつGIのタイトルを獲ってもおかしくないだろう。成長、いや進化し続けている鈴木。「第66回日本選手権」(立川)でも2連勝で準決勝に勝ち上がった。「感じは凄くいい」と多くは語らなかったがその表情は堂々としていて、風格さえ漂っていた。前検日より初日、初日より2日目と取り囲む報道陣の数は日増しに増えていった。一次予選、二次予選の走りを見れば、夢が現実、タイトルを獲っても驚かないほどのデキだった。

鈴木謙太郎・90期
 勝負がかかった準決勝。後ろは山崎芳仁。深谷知広、浅井康太、藤木裕が相手。最終ホームから前に出るとアクセル全開。中団に藤木、深谷を8番手に置いてレースを引っ張った。山崎に勝たせる先行ではなく、自らも勝ち上がれるような考えた先行を見せた。藤木は仕掛けられず前で決まったと思った瞬間、深谷が大外を突き抜けた。深谷の上がりタイム10秒6はバンクレコード。残ったと思った鈴木だが、立川の直線は長すぎた。最後の2メートルで4着まで沈んだ。「仕方ないですね。自分の今できることはできたから」と悔しさを押し殺して報道陣の質問に答えた。
 2011年の「東日本大震災」で被災。茨城県つくば市に避難した。そこで武田豊樹の門を叩いた。「全てが違った。レースに対する考えや普段の生活。今まで自分は練習は練習、実戦は実戦の感覚だったんです。でも武田さんからアドバイスされて実戦を意識した練習をするようになった」。その結果、実戦でも自然と体が反応するようになった。練習だけでなく食生活まで。今年に入り、より取手競輪場に近くなるよう引っ越した。少しでも早く、長く練習したいから移動時間を考えての決断でもあった。
 今シリーズは結果的に見せ場を作っただけで終わってしまったが、周囲の見る目、評価は以前にも増して高くなった。「まだまだですよ。もっと練習しないと」と謙遜したが、誰が見てもGIは射程圏に入った。それだけの走り、存在感を見せつけたダービーでもあった。


立川競輪場より