インタビュー

「S級チャレンジ」中村健志 熊本 96期 A級1班
攻めて攻めて必ずやS級に
 小嶋敬二ら多くのスター選手を輩出した名門・日本大学自転車部の出身で、アマチュア時代には世界も転戦。素質だけならS級で活躍する実兄・雅仁(90期)をしのぐと鳴り物入りでデビューした中村健志(96期)だったが依然、A級暮らしが続いている。

中村健志 熊本・96期
 ここ数年、競走得点は常に90点をクリアしているが、最後に判断ミスや、器用すぎるがゆえのオーバーアクションが災いして5期連続で失格の憂き目に遭っている。S級に昇格できる人数が100人前後の昨今では一度の失格は命取り。マイナス3点をばん回する突破力はなく〝どっぷり〟と浸かっている。
「師匠(小西浩一郎=55期)には、失格は頑張っている証拠と言われています(苦笑)。攻めていないと勝負できないし、そこを消してしまうと自分の持ち味はなくなる。(失格のリスクは)仕方ないと割り切っているが」と、もどかしい胸の内を明かす。
 焦りもある。競技者として最高のパフォーマンスを発揮できる時間を考えると27歳の年齢はリミットに近い。そして、なにより結婚もして子供もいる。一家の大黒柱として家族を支えていかないといけない。そのためにも「S級点を取るだけでなく(S級でも)勝負できるぐらいにならないといけない」と、この時ばかりは真剣な表情だ。
 3月、陸上トレーニング中に左足首をひねってしまうアクシデントが響いて、前期の中盤から終盤戦にかけてはギアを上げて回転力を補うレースを繰り返していた。常に違和感を感じながらも、成績だけはきっちりとまとめるあたりは改めて潜在能力の高さをうかがわせる。ここにきて不安の種だったケガも完治。練習では本来のスピードが戻ってきて、ギアの威力に頼ることなく思う存分、自分のレースに専念できる状態になった。
 スタートダッシュを誓った今期初戦の7月小倉ミッドナイトは2着1着の成績。決勝進出は逃したが、オール2連対なら上々の滑り出しといえよう。「今期はまず失格しないように。優勝は最低でも3回はしたい。回数? 何となくですね(笑)。それよりも連を外さないようにしたい。連対を外さなければお客さんは喜んでくれる。お客さんが(競輪場に)来てくれなければ、走って頑張っていることも伝えられない」
『お祭り男』は大きな舞台になればなるほど最高のパフォーマンスを発揮する。誰もがうらやむ才能を持つ中村が今、走っている場所が似つかわしくないことは皆が分かっている。ようやく〝闘争モード〟になった肥後の暴れん坊が、本来の居場所に辿り着くべく、各地で旋風を巻き起こす。


小倉競輪場より