インタビュー

渡辺ゆかり 山梨 102期 A級2班
自転車のためにいかに肉体転換するかが最大の課題
 アスリートとしてひとつの極みを見た。2002年ソルトレイクシティ、06年トリノと2度の冬季五輪を経験した渡辺にとって、ガールズケイリンで目指すものとは何だろうか。
 スピードスケートでは実業団の名門・富士急行に所属していた。「会社がスケートに対してバックアップを惜しまなかったこともあって、プロに近い環境で打ち込めた。生活の全てがスケートのためにあったし、自転車に転向した今と変わりない感じですね」。違うのは、練習の成果を発表する機会が多いか、少ないかだけ。競輪は月に2~3開催の試合があるが、スケートは冬季のみのスポーツで、まず目指すべき主要大会は2つほど。日本代表となって海外を転戦できればまだしも、ピークの持っていき方を誤れば、リベンジの機会は1年後。「これが五輪ともなれば4年に1回ですから」。集中力を最大限に高めて、日の丸を胸に戦ってきた。

渡辺ゆかり 山梨・102期
 「スケート以外の要素がなくなった」という肉体を、自転車のためにいかに転換するか。目下、渡辺が取り組む最大の課題だ。「やはりベースの部分が一番大事だと思う。競輪はタイムが出ても勝てないし、コンディションがよくても負けることもある。それでも基礎的なものは絶対に崩れない。その上で戦法の幅が広がれば、面白みが出る」。ファンのことを考えれば、時には目先の勝敗にこだわるのも重要。だが、常に勝負できる選手になるためには「今は時間がどれだけあっても足りない。3年はかかると思います」と言う。焦らず、辛抱強く取り組んでいる。
 冒頭の疑問―目指すものは何か、の問いに、渡辺は少し間をおいて答えた。「自分の筋肉、あるいはその細胞の全てが自転車で勝つために動くようになったら、それ以上の達成感はない。そうなったらガールズケイリンに思い残すことはないと思うんです」。惜しまれつつ引退するのが理想―とも。ファンにとって幸いなのは、渡辺ゆかりというプロ選手が完成するのはまだ先だということ。「競輪には正解がないから、長続きするんですよね。気持ちのスタミナは切れない」。渡辺なら、いつかきっと究極の進化をなし遂げるだろう。


奈良競輪場より