インタビュー

猪俣康一 愛知 99期 S級2班
確固たる信念と、常に前向きに捕らえるプラス思考
 まだまだ強くなる。これからも間違いなく。猪俣康一。ホームバンクの10月一宮記念(1着8着1着5着)。4日間とも貫き通した先行策から、強く熱いメッセージがヒシヒシと伝わってきた。そして常に前を向く敗戦コメントにも大きな可能性が感じられた。ひと昔前の、競輪選手らしい雰囲気を持ったひとりである。

猪俣康一 愛知・99期
 力でアッサリ逃げ切ったあと、二次予選で待っていたのは山内卓也(77期)との師弟連係だった。今春の競輪撤退宣言で、誰もが「最後の一宮記念」と意識しての出場。悲願のホーム記念初Vにラストチャンスの第1人者山内を連れ、猪俣は打鐘前からの積極戦で、終始主導権を握り、ハイペースで飛ばした。一宮特有の強風が影響し、直線で失速したが、番手の師匠は準決勝へ送り込んだ。
「捲り?考えてませんでした。卓ちゃんをつけてですし、捲りで突破しても今後のためにはならないから。プレッシャーを感じたなかの先行で勝ち上がりたかった…。でもまだまだ力不足でした。次に生かしたい」。猪俣は実力とキャリアの足りなさを素直に受けとめた。しかし、3日目、最終日も同じように、自らレースを動かし、風を切って走り続けた。シリーズ4走とも強い意志を持った内容ある走りで、初めてのホーム記念を終えた。「また1つ、つかめたものがあった」と。
 デビュー3年目を迎えた今年1月にS級へ昇格。まだ準優勝(4月小倉)が最高成績だが、決勝進出も最近は増え、走るたびに確実に力を蓄えてきている。9月にはGIオールスター(7着9着8着)にも初出場した。「予選はあえてペースを上げる先行でいきました。7着でしたけどゴール近辺までは粘れていたし、今後の1つの物差しになりました。全く歯が立たない相手でもないと思えました」。3走とも大敗だったが、敗戦のなかで今後の血や肉になる何かを見つけ、つかみとった。
 高校卒業後にアメリカへ渡り、マウンテンバイクチームに所属して転戦。その後、モトクロス生活を経て輪界入りしたため、すでに37歳。「40歳で先行を確立するのが目標ですね。武田豊樹さんのように、相手を翻弄(ほんろう)できる先行です。競技をしていた時と違って、競輪はバンク、街道と環境はそろっている。いくらでも練習できるからあとは努力次第です」。確固たる信念と、常に前向きに捕らえるプラス思考。なによりタフな自転車経験が猪俣にはある。どこまで上り詰めるか。スターの雰囲気と香りを持つオールドルーキーの今後を見つめていきたい。


一宮競輪場より