インタビュー

近藤龍徳 愛知 101期 S級2班
父から譲り受けたガッツと持ち前のレースセンス

近藤龍徳 愛知・101期
 12年7月にデビューの23歳。父・近藤幸徳(50)、兄・良太(26)のイメージと比べると派手な出で立ちと鋭い眼光は一風変わっているように見える。だが、それは見た目であってハートはやはり父親譲りのひたむきさに満ちあふれていた。
 デビュー当時は先行、捲りの自力に徹していたが、165㎝、59㎏の体ではA級では通用するものの持久力でS級では限界があるのを肌で感じとっていた。A級を1年半でクリアした近藤は次のステップをどう戦うか模索した。
 今年1月からのS級デビューは苦いものだった。自力を含めた自在戦の戦いは一宮、玉野、松阪と3戦して「思い通りのレースをさせてもらえなかった」という洗礼を浴びた。もちろん配分が詰まり、満足なトレーニングを積むこともできなかったのも要因の1つでもあるが、近藤はそれを言い訳にしなかった。そして迎えた奈良記念。これを機に徹底した脚質転換を決断。師匠の鰐渕正利とも相談して追い込み主体の競走にレーススタイルを変えた。初のGIIIでもあるこのシリーズ。「今はバック本数がいっぱいあるけど記念でアピールすれば番組さんの印象も変わるでしょう」と近藤は位置取りを意識する競走に徹したが相手が違いすぎる。全く歯が立たずに4日間が過ぎ去った。それでも近藤に敗北感はなかった。「レースをさせてもらえないのは当たり前。自分のレースをできるようにならないと駄目です。そういう意味では最高の勉強の場になった」と振り返った。
「自分の持ち味はA級時代でも生かしていたすばしっこさ。この小さい体をこれから武器にしていく」と前を見据えた。近藤のキャラクターは物怖じしない強心臓。自力選手よりも追い込み選手に向いている。若いうちから追い込みにチェンジした方がいいタイプの選手だ。
 S級には名だたるマーク選手が目白押しだが、その壁を打ち破るポテンシャルが近藤にはある。奈良GIIIでは朝日勇や、富永益生が近藤にマークした。位置取り重視のレースと分かっていても先輩選手が付けてくれるありがたさを近藤は身に染みて分かったはずだ。 「付けてくれる先輩たちに信頼してもらえるようにこれからも頑張る」と言葉に力を込めた。まだ経験不足が露呈するレースはこれからもあるだろう。それでも父から譲り受けたガッツと持ち前のレースセンスで成長を続けていくだろう。
 父子家庭で育った良太と龍徳。その分、父は余計に厳しく育てた。普段の礼儀正しさはその表れでもある。ファンから多くの声援を受ける父の背中を見て育った龍徳。S級でもさらに前進する姿を見守っていきたい。


名古屋競輪場より