インタビュー

「キャッチャーズアイで先行」栗山俊介 奈良 103期 A級2班
目標は早くS級に上がって先行を貫いて戦っていくこと
 寒風吹きすさぶ古都バンクで迷いなく風を切った。「自分の力が今どこまで通用するのか」。燃えたぎる闘志とは別に、冷静に自分を見つめる客観的な眼もあった。

栗山俊介 奈良・103期
 14年年明け初戦の豊橋でチャレンジ9連勝でA級2班への特別昇班を決めた。特昇初戦は1月15日からの地元奈良のFIだった。予選、準決勝と先行で圧倒してみせた。準決勝では「僕から車券が売れていたのでびっくりしました。柄にもなく、びびりましたよ」と苦笑い。それでもレースは、直線踏み直して後続を寄せ付けなかった。
 決勝戦は、前S級の窓場千加頼(京都)とは別線勝負。初日特選を制して準決勝も力の違いを見せつけた才迫開(広島)らとの対決となった。栗山は才迫を抑えて、赤板から先行した。しかし細切れで他のラインの仕掛けも早い。番手の伊狩知人(奈良)も後続のけん制で落車して、才迫の捲りは防ぎ切れなかった。それでも3着に粘り込んだ。「才迫さんが強かったです。A級戦でもある程度は戦えることはわかったし、自分の課題も見えてきた。収穫は大きかった」と納得の笑顔を見せた。
 小学校から野球ひと筋。静岡県の興誠高校(現・浜松学院)では捕手で活躍、スポーツ推薦で名門・近畿大学に進学した。しかし正捕手にはなれず、3年生の終わりに転機が訪れた。大学OBの紹介もあって奈良の愛好会から競輪選手の道を選択した。「持久力や体力は野球を続けてきたし自信があった。それに自転車は努力すればする分だけタイムや成果が上がるのが楽しかった」と力を付け2回目の技能試験で受かった。
 現在は、S級経験もある徹底先行の武田和也(奈良)らとバンク、街道に出て先行テクニックや先行魂を磨いている。「目標は早くS級に上がって先行を貫いて戦っていくこと。自分の利点はキャッチャーをやってたんで、冷静に自身を見られる視点や野球で言うインサイドワークだと思っています。S級で通用する先行力を身に付けたい」
 野球の捕手は、守る8人の野手とは違う視点でゲームを見守る。競輪の先行も他の8人を引き連れてレースをコントロール出来れば勝てる。栗山は元捕手の視線を武器に今後も風を切る。


奈良競輪場より