インタビュー

高久保雄介 滋賀 100期 S級2班
超一流との対戦で感じた「すごい風」
「たかが1レース…、されど1レースでもある」。2014年2月25日の静岡記念決勝戦。滋賀のパワフル先行・高久保雄介にとって、今後の競輪生活を左右する1レースになったかもしれない。これまで一度も経験したことがない、何もかも違った刺激的なレースだった。
「すごい風でした。でも体感できたことはこの先につながっていくと思います」と高久保も振り返る。風とは東のカリスマ武田豊樹の圧倒的なスピードのことだ。

高久保雄介 滋賀・100期
 多くのファンの脳裏に、まだ鮮明に残っているだろう。新春1月から戦列復帰した武田のグレードレース復帰戦として、注目された静岡記念。最終ホームから一気の巻き返しでひと飲みし、豪快に仕留めた、あの決勝戦だ。
「勝負どころで前に出られたけど、ほんとレースで何もできなかった。ファンにすれば変な6番車がおったなっていうぐらいの存在感ない走りで…。最終ホーム手前で流した瞬間、とんでもない風が通り過ぎていきました」。高久保にとって、超一流の力とスピードを肌でまざまざと感じた一瞬だった。同時に力不足を大いに思い知らされた。
 14年1月にS級初昇格。そして記念初参戦の1月大宮では9・4・9・8着。「最初の記念がボロボロだったから、2度目は少しだけいい着順を」。ちょっとだけ強い気持ちで臨んだ2度目のGIII参戦は、まさかのファイナル進出だった。準決勝の大量落車が高久保に幸運を運んだとも言えたが、GP戦士後閑信一を相手に逃げ切った二次予選の走りがあったからこそ。S級生活1期目の3月6日現在、17戦してすでに4勝。ファンの車券に貢献する3連対率も、堂々47%をマークしている。ペース駆けに持ち込んだ時のパワーランと強靱な粘りに定評もある。
 しかし3月四日市FIでは「力不足」を改めて痛感した。すんなり先行態勢に入ったが、番手へ飛び付いて競り勝った小岩大介ら3人に直線で交わされ、人気を集めた予選で4着スタート。そして準決勝も田中晴基の捲り追い込みを浴びて、7着まで失速した。「田中さんの上がりが11秒7で自分は12秒6。タイムを見て納得です。これではだれでも捲られます。帰ってまた練習ですね」。素直に上位陣との差を再認識していた。
 ただ挑戦は始まったばかり。適性入学の100期で、自転車キャリアは浅く、今後の伸びしろは大いに期待できる。「まずは先行してFIで決勝に乗れるように。そして今度は力をつけてまたあの舞台で走ってみたい」が今の目標だ。後ろ姿でも一目瞭然の筋骨隆々で、鋼のような高久保の圧倒的肉体が、自転車にダイレクトに伝われば…。風の体感は出世エピソードの1つになっている。


四日市競輪場より