インタビュー

筒井裕哉 兵庫 89期 S級2班
花咲け、未完の大器
 未完の大器がようやく花を咲かせる時が来たか。南国土佐の龍馬スタジアムで魅せた4日間は、その萌芽を感じさせるものだった。

筒井裕哉 兵庫89期
 4月12日から行われた高知記念は、新田祐大、渡邉一成、脇本雄太ら自転車競技のナショナルチームを経験するスーパーアスリートがそろった。その中でも存在感をみせた。初日、2日間は最終ホームから主導権を取り切る堂々の勝ち上がりで準決に駒を進めた。準決は力でねじ伏せる新田ラインを追走。番手の内藤宣彦の厳しいブロックに遭いながら最後は2着に流れ込んだ。決勝戦は、脇本ラインの3番手。最終バック3番手と「一瞬よだれがでた」と話すおいしい位置だったが、最後は内に包まれたまま、7着に終わった。それでも「今年得た手応えをレース本番で出し切れた収穫のシリーズだった」と振り返った。
 八種競技の高校総体を制するなど陸上競技のスーパーアスリートだった。中京大学を経て、高校の同級生だった岩津裕介(岡山)らの勧めもあってプロレーサーとなった。身体能力の高さでS級にはすんなり昇進したが伸び悩んだ。圧倒的に強い練習の力が本番では半分もでない。思い悩んだ筒井が相談したのは、昨年12月の広島記念で会った伏見俊昭(福島)だった。ほとんど会話もしたことのなかった伏見に自己紹介から始まり、本番で力を出し切れない悩みを打ち明けると、輪界のスーパースターは気さくに相談に乗ってくれた。「僕のフレームを上げるよ」と思わぬクリスマスプレゼントまでもらった。フレームは筒井には堅くて重たかったが、それを練習で乗りこなすことで、乗り方に微妙な変化があって自転車の力の伝わり方が良くなった。
 いつも親身になって指導してくれる松岡健介(兵庫)の全日本選抜準Vも大きな刺激になった。「松岡さんには感謝してもしきれないぐらい世話になってます。その松岡さんが強くなってると言ってくれてるし、僕は結果を出して恩返しするしかない」。淡泊だった自分の性格を鼓舞して、ようやく欲もでてきた。高知記念の2場所前の岸和田決勝で絶好の番手戦ながら3番手の伊藤健詞(石川)に抜かれた悔しさもばねになった。高知でつかんだ手応えは一過性に終わらせたくない。その決意で今年こそ大輪の花を咲かせる。


高知競輪場より