インタビュー

松尾信太郎 福岡 92期 A級1班
近況好調 A級の卒業は近づいてきた
 福岡・北九州の松尾信太郎(福岡)が調子を上げてきた。昨年10月京都向日町の落車でエースフレームを失い、同時に体のバランスのズレに悩まされ、着をまとめるだけのスッキリとしない時期を過ごしていた。苦難を乗り越えたのは2月岐阜で山田庸平(佐賀)を利しての抜け出し今期初優勝を飾ったとき。勝負事にはつきものである「流れ」を手繰り寄せると、その後は快調な走りをみせている。懸念材料だった自転車も時間が経つにつれ体に馴染むようになり、3月小松島で今期2度目の優勝を飾るころには完全に自分のモノに仕立てた。もちろん、体も入念なケアで以前の状態に戻し、心配事もどこ吹く風だ。今期は4月末の小倉まで10場所を消化して7優出と各地でファンの人気に応え続けている。大ギヤ隆盛で追い込み選手が不遇の時代を迎えているなか、差しの決まり手は2ケタをキープ。今期の競走得点も94点台のハイアベレージで失格などの大きなアクシデントがない限りは2期連続のS級点獲得は安泰だ。

松尾信太郎 福岡・92期
 混戦を縫う鋭い切れ脚がセールスポイントに見えるが、自己評価はまったく逆だ。「自分ではキレがいいと思ったことはないですよ。そもそも練習は弱くて、みんなからは練習とレースの力が合っていないと言われています。競走になると自分の持っている力以上のモノが出るみたい」。練習グループが園田匠、小川勇介、永田隼一(ともに福岡)とバリバリのS級レーサーばかりだから…と多少は割り引いても「アマチュアにも負ける」となってくれば、いささか強さに疑問符がともってくる。
 では、強さの秘訣は何か。信太郎の実弟で現在S級に在籍する透(96期)が話す。「練習グループは別(練習地は信太郎が北九州空港近辺、透は下関方面)ですが、お互いに行き来して練習することがあるし、レースについて二人で話をします。(レーススタイルは同じに見えて、実は)兄貴は冷静ですね」。同じ追い込み選手でも闘志を前面に押し出すべきと考える弟に対し、兄貴はクールに立ち居ふるまう。勝機を逃がさないための研鑽と練習、それを実践できる集中力が信太郎の「本番型」たる所以なのだろう。また同じ中学、高校、そして野球出身という前歴まで同じ2歳年下の弟が、自分を慕いつつも真後ろから迫って、時には一歩前に出て行く。兄としての威厳を守るため「負けられない」という気概も背中を押している。昨年1月の失格でS級昇格は半年、弟に先を越されてしまったがいつかは同じステージとの思いは抱き続けながら、最近は戦い続けてきた。
 A級の卒業は近づいてきた。S級パンツに履き替える7月以降をスムーズにライディングさせていくことを考えると、9月までの競走得点に反映されるこの2か月間をいかにして過ごすかが大事。先行選手に左右され、持ち点で序列が決まる追い込み型ならなおさらだ。「今のA級特選なら初日に負けても2日目(準決)があるが、S級は予選だから勝っていかないといけない。だから、初日特選からバンバン勝っていこうと思っている。シビアにいかないといけない」。北九州のエースで松尾が兄とも慕う園田匠(福岡)の勝負に対するスピリットが、ここにも継承されている。


小倉競輪場より