インタビュー

下田和美 熊本 72期 A級1班
雰囲気作りが上手な、グループのまとめ役
 熊本県には100人弱の選手が所属しており、九州では福岡に次ぐ大所帯だ。
選手たちはもっぱら、競輪場のある市内を中心にそれぞれ練習環境を整えているが、県全体が広大な面積を誇るだけに、あちこちに選手が点在しており、自ずと練習グループの数も増える。

下田和美 熊本・72期
 下田は熊本北部に住む選手たちで構成される「玉名グループ」のまとめ役としてチームを牽引している。メンバーは礒田義則(63期)、荒木真慈(69期)、山口聖志(84期)、新井秀明(85期)、廣田樹里(89期)、服部克久(90期)、高村星八(99期)といった面々で、時おり松川高大(94期)や興呂木雄治(96期)らの若手自力型が出稽古へとやってくる。ベテランから若手まで幅広いラインナップがそろうことで、人数や状況に応じたバリエーションに富む練習ができ、切磋琢磨するには抜群の環境が生まれる。プライベートでも、バーベキューや食事会を頻繁に開いたりと結束力は固く、全員の距離感がとても近くて雰囲気もいい。それはすべて、下田が見事な調整役に徹しているからだ。
 練習では、必要があれば進んで風を切って先行するし、バイク誘導で長時間若手を引っ張ることも。またセッティングについて請われれば、いくらだって調整に付き合う。おかげで家の裏に建てた道場は365日フル稼働だ。ただし、確実に芽が育っているのは事実で、最近では松川高大が2場所連続Vを飾ったり、服部克久が復調の兆しを見せるなど、若手たちが下田の醸し出す緩やかであたたかい空気をたっぷりと吸い込んで、ノビノビと立ち回っている。彼らの活躍が下田はとてもうれしい。「実戦では(タテ脚は)出ませんよ。練習ではキツいし仕方なくです(笑)。みんなの目的意識が高いので、逆にこっちが引っ張られています」とは本人の謙遜の弁。
 とくに服部と高村は、下田の面倒見の良さにどっぷりと甘えており、好きで好きでたまらない。「競走が無いときはほぼ毎日」下田家に通いつめており、道場での練習に食事、さらには昼寝をしてからシャワーまで浴びて帰るのがルーティンワークとなっている。しかも下田が競走に行っているときでも現れるというのだから、相当居心地がいいのだろう。
 名伯楽と呼ぶにふさわしいが、まだ早い。「S級へ復帰したい気持ちはずっとある」と常に前を向いているし、ヤル気に満ちているからだ。今期は92、3点台をキープし続けS級点数を確保するには十分な位置にいる。残り1ヵ月あまり、仲間の支えを糧に目標達成へと全力をかける。


熊本競輪場より