安谷屋将志(A級1班 沖縄 96期)
旋風起こす!
7月になり2014年の後期がスタートした。九州沖縄地区のA級1・2班戦では沖縄のイケメンレーサー・安谷屋将志(A級1班 96期)に注目してみたい。前半戦では4月高松で下沖功児(宮崎)の逃げに乗って抜け出し、待望の初優勝を飾ると、続く同月小倉では高橋幸司(山形)の先行をまくって松尾淳(岐阜)、米原大輔(熊本)らを下して連続V達成。一段、一段とその歩みはスローではあるがまたひとり「深谷世代」の花が開こうとしている。
安谷屋将志(沖縄 96期)
5、6月の成績が不本意な成績に終わり、4月のブレークが一時的なモノに終わってしまったことが不満で前期を総括すると「最後が悪かったのでちょっと…ですね。優勝したときは先行もまくりも積極的にできたが、最近は勝ちにこだわりすぎるあまり力を出し切れずに終わってしまった」と合格点とはいかず。
競走得点が低く人気薄のため自由にレースをさせてもらえた状況から一変して、周りに警戒されながらの走りになった。しかも人気に応えないといけないという環境が一種の〝壁〟になってしまったのか、これはスター選手が必ず通る道なので仕方がないとも思うが、そうスンナリ受け入れられないのも事実である。
臨戦態勢を整えたい2014年後期。幸いなことに安谷屋にはこれとないお手本のような選手が身近にいてバックアップは完璧だ。かつての競輪不毛の地も、S級で活躍していた廣川泰昭(沖縄)が愛媛から移籍してきたことでS級選手とのホットラインが開通。廣川が橋渡しになり沖縄県所属の若手選手がトップレーサーの〝姿勢〟を肌で感じることができた。さらに東日本大震災で被災し、練習場所を沖縄に移した山崎芳仁、佐藤慎太郎、金澤竜二(ともに福島)らと暇さえあえば顔を合わせられる誰もが羨む練習環境が生まれた。安谷屋がデビューしたころは沖縄県所属の選手も数えるほどで「師匠(津留崎由文=引退)もすぐにやめられたので一人で練習していた。ライン競走も知らなかったし、競輪自体がどういうものか分からなかった。ただ、走っている感じだった」と話すように〝本当の〟競輪選手ではなかった。抜群の環境のもとバスケットボールで培った素質が目覚めると競走得点はあっという間に7、8点も上がった。「山崎さんの競輪に対する気持ちというか、ひとつひとつの行動が勉強になる。普段の会話でもちょっと競輪の話をすると雰囲気が変わって入り込むというか競輪に対する気持ちが違う。一緒にいるだけで感じます」と超一流レーサーのエキスを吸収して〝ホンモノ〟の競輪選手になった。
今期は初のA級1班になり、本格的にS級点獲得を目指しての戦いになるが佐藤から受けた「力を出し切れなかったときの悔しさを思い浮かべながら走れば仕掛けがはやくなる」のアドバイスを真摯に受け止め、レース内容を最優先にこだわっていくつもりだ。「(初)優勝は前期にしたので、S級に上がりたいのもあるが、そればっかりだと勝ちにこだわったレースになって小さくなる。出し切れなかったときの悔しさを考えて走りたい。出し切れば勝てると思うし、結果も付いてくる」。これまで以上に大胆かつアグレッシブなレーススタイルを武器に各地で旋風を巻き起こすつもりだ。
小倉競輪場より