インタビュー

井上昌己 長崎 S級1班 86期
天才レーサーが帰ってきた!
アテネ五輪の銀メダリストであり、続けてGIを2本制覇。さらにはKEIRINグランプリまでもを涼しい顔で軽々と手にしてしまった。そんな身軽な立ち回りをうらやむ九州の選手たちは、井上のことを“天才レーサー”と呼んで畏敬の念を抱いている。

井上昌己 長崎・86期
 肌感覚でレースの動向を読み切り、たぐり寄せた流れを離さぬ判断力は冴えに冴え、これまで幾度の戦局を乗り切ってきた。しかも井上が持つのは天性のレースセンスだけではなく「昌己は抜群の引きの良さを持っている。あれにはかなわない」と、プライベートでも親交のある合志正臣や中川誠一郎が証言している。そんな天才も今年でもう35歳、アラフォー世代に突入した。「もういい年齢ですよ」と話すここ最近は、度重なる落車負傷でなかなか本調子をつかめず、好不調の波が激しくなった。天才の勢いにも陰りが見えたのか、そんな悪い予感も思わせた。
「治りかけるとまた落車をしたりで、なかなか流れに乗れませんね。若いころは競輪で成績がいいときは、プライベートで賭け事をやってもそっちの成績も良かった。でも最近は、あまり比例しなくなっているかな」 そうは言っても、決定打に欠く九州地区を若いころからけん引し続け、未だに自力でバリバリ戦い続ける実力者。立て直す術はいくらだって知っている。
実証したのが1年ぶりにGIファイナル進出を果たした弥彦・寬仁親王牌だった。決勝戦こそ深谷知広の巧妙なプレーに不覚を取ったが、気がつけば3着に入線して久々の表彰台へ。終わってみれば2、3、2、3着と4日間すべて確定板に名を連ねて、健在っぷりを大いにアピールした。「(親王牌直前に走った)川崎から新車で、3日目にセッティングを変えたら失敗。元に戻したら格段に良くなった。合志さんのアドバイスも効いた。感じも良くなっているし帰ったら練習します」 8月からは村上義弘や武田豊樹ら、自粛を終えた面々が帰ってくる。その中にあっても力負けせぬ圧巻のレース運びで、存在をとどろかせるはずだ。天才が本気で努力をしだしたら怖い。


佐世保競輪場より