インタビュー

田中 誠(31歳 福岡 89期生)
不屈の精神で復活を期す
 8月福井FIの2日目に7番手バックまくりで1着取りを果たした田中誠。実に昨年9月の小倉FIの準決で勝利して以来、約11ヶ月ぶりの勝利を収めた。「もう勝てないかもしれない」と弱気の虫がうずいた田中にとって大きな1勝だったに違いない。展開は箱田優(青森、98期)と奥平充(京都、93期)のもがき合いといえ、上がりタイム11秒2が示す通り、貫禄を見せつける一戦だった。最終日も7番手からまくり上げ、バックまくりに転じる伊藤保(京都、71期)に巧みに切り替え1着取りと連勝をマークした。
 「勝ったといえ、所詮は負け戦でしょ。あとの祭りって感じですよ」と田中。勝ち上がりでキッチリ勝ってこそ完全復活という思いがあるのだろう。「福井はもともと得意バンクだったしね。初日は6着といえ、個人上がりが10秒9だったし、それなりに手応えはあった。やっと結果が出せたという感じですね」と冷静に振り返る。

田中 誠(福岡 89期)
 昨年の11月末に坐骨神経痛を患った。「それまで、違和感はあったのですが、ひどくなったのは競輪祭のころですよ。もう寝起きに支障をきたすくらいつらかった」という。だましだましレースに臨んでいるものの、やはり結果は正直だ。勝てない。1着が取れない。プロにとって厳しい現実と向き合わなければならなかった。「整体、マッサージ、腰にいいと噂を聞くと、とにかくすがる気持ちで色々な治療方法を試してみた」が、結果は芳しくない。「そのうち、だんだん点数も下がってくる。無理して練習すると腰痛がひどくなる。腰をかばって軽めに練習すると実戦ではボロボロ…」という苦しみの中、田中の思考にある選択肢が芽生えた。「このまま、腰をかばってヤワに練習して勝てない悔しさに一生付き合っていくべきか。それとも、この腰が壊れても構わない。しっかり練習して結果を出すべきか」。もちろん、選んだのは後者の方。「レースで悔しい思いをするくらいなら、腰が壊れてもいいという結論になりました。そうしてきつめの練習を再開したら、不思議と腰痛が和らいできたんです。自転車に乗る分は問題ありません。ハードな練習ができるようになったから、少しずつですが状態も上向いてきていると思う」と田中。福井の2勝は当然の結果だったのかもしれない。
 約1年という長いスランプを克服しつつある。「来年のこの時期はオールスターで頑張りたいですよね」とも。復活の道は半ばだが「しばらく忘れていた勝ち癖を思い出せたのは大きいと思うよ」と、笑顔で語ってくれた。


別府競輪場より