インタビュー

石井 寛子 東京 104期
昨年を100とするなら、今は40くらい
 9月の前橋「オールスター競輪」内で行われた「ガールズケイリンコレクション」。女子3期生の新星・小林優香がコレクション初出場で初Vを果たし、一躍「女王」の座に就いた。デビューから負けなしの連勝記録こそ22でストップしたが、現役最強の女子レーサーであることに異論はないだろう。

石井 寛子(東京 104期)
 このレースで準Vだったのが、昨年まで小林と同じ立場だった2期の石井だ。デビューから負けなしの12連勝、地元・京王閣で行われた「ガールズケイリンコレクション」で初出場初制覇の8場所連続優勝と快進撃を続け、昨年の石井の足跡を今年の小林がそっくりにレースをしている感じだ。無敵のヒロコ時代は、長く続くかに思われた。だが、今年に入ると石井が突如「らしさ」を失う。昨年は1度しかなかった着外(4着以下)は、すでに9回も経験している(9月15日現在)。14場所走って12回優勝(ガールズケイリンコレクション含)した2013年の強さは見られない。
 小林を始め、レベルの高い3期生が期待以上の活躍を見せているのも事実だが、2期No1の石井がこれほどまでに埋もれていくのか。本人は「練習は大好きだし、いつも気持ちよくできているんです。ケガをしているわけでもないし、レースで脚の不安を感じることもない」と言い切る。原因を問われて、しばらく考えて出てきたのは「メンタル面の問題」だった。
 一度は君臨した女王の座。勝たねばならない重圧がのしかかるのは必然だ。「最近はレースになるとすごく緊張して、体も疲れるんです」。結果を求めすぎるあまり、持ち味だった思い切りのよさは影を潜めた。「脚力が落ちているのも事実だけど、やはり気持ちの問題ですね。勝ちたいはずなのに、弱気になっている。昨年を100とするなら、今は40くらい」と自己分析も辛口。守りに入った自分の殻を破れず、もがき苦しんでいる。
 苦しい状況にあっても、8月松戸「ガールズケイリンフェスティバル」、そして今回の前橋「コレクション」でともに準V。だが、優勝したのが両方小林だったこともあって、「コレクション」のレース後は「本当に悔しい」と唇をかんだ。「(先行した石井)貴子ちゃん(千葉)の後ろに入って、絶好の形になった。自分のタイミングで踏み込んだのに、その上を(小林に)行かれてしまった。弱いです。落ち込みますね」と、笑顔はまったくなし。勝っていれば、ガラリと気持ちが変わる可能性もあったのだが…。
 デビュー直後、無敗の連勝を続けていた石井に尋ねたことがある。負けることは怖くないのか、と。いみじくも当時の彼女は「負けることより、自分の力が出せずに終わることの方が悔しい。出し切った上での結果なら、何着でも納得できる」と即答した。その時と同じ気持ちで戦えているなら、悩むことは何もないはず。「コレクション」で賞金を上積みしたことで、年末の岸和田「ガールズケイリングランプリ」出場も近付いた。「あと3か月、グランプリを目標にしっかり準備していきたい」。強い気持ちで、女王の輝きを取り戻す。


前橋競輪場より