インタビュー

眞鍋 伸也 香川 85期 A級2班
今ある力で少しずつ、できることをやっていく
 簡単に語り尽くせるほど、苦しんだ時間は短くない。ひとつ勝ったからと言って、手放しで喜ぶようなことでもない。それでも、ファンはこの時を待っていた。10月23日の岸和田競輪「サテライト阪神カップ」2日目、A級一般1R。3分戦の攻防で中団を確保した眞鍋が、逃げる玉村元気(福井)を最終バックからまくって出る。ゴール前では岡崎祥伍(岐阜)のまくり追い込みを微差しのいで1着。これが今年初勝利、昨年2月13日の防府以来、1年8か月ぶりの白星を挙げた。

眞鍋伸也 香川 85期
 昨年1月にA級1班に戻ったが、6月16日の小倉ミッドナイトの初日にアクシデントが襲う。落車に巻き込まれ負傷、長期欠場を余儀なくされた。「骨盤骨折でした。今まで落車しても、骨折したことがなかったのが、いきなり骨盤とは…。半年後に復帰できたけど、体力も相当落ちて、練習も今までと感覚が違う。レースでも力が入らない。精神的にもキツかったですね」。回復への道も手探り状態。トルクを増すために体重を増やせば太りすぎと言われ、体を絞ればやせすぎと言われ…。「周りの声を聞きすぎた部分もありましたね。それも結果が出ないがゆえの迷いだったと思います」。それでも焦らず、腐らず戦って、トンネルを抜け出した。
 復調の兆しが見えたのは前場所の玉野。最終日、最終バックからまくって2着に入ったレースだった。「勝ち上がりではまだまだだが、一般戦なら自力も出るし、少しずつつかめてはきている」と、自力勝負にこだわる姿勢がより強くなった。高校時代には個人追い抜きで全国制覇を果たし、鳴り物入りでプロの道へ。デビュー3年目には早くもA級1班に昇格。181センチの恵まれた体格を生かした先行、まくりで四国の大砲候補と期待を集めたが、S級への壁を乗り越えられなかった。チャレンジへの降格も経験したが、まだ34歳。このまま終わるには若すぎる。大事なのは、本人が戦い続ける意志を持ち続けられるかなのだ。
 きっかけひとつで事態が好転するのは、勝負の世界ではよくあること。「正直、レース中に怖さを感じる時もある。横の動きもできないですしね。元には戻らないと思うけど、今ある力で少しずつ、できることをやっていく」と、控えめな言葉の中に希望が見える。ケガを克服し、自分の殻を破ったとき、眞鍋の潜在能力が花開く日がきっと来る。遅咲きでもいい。花は咲いてこそなのだから。


岸和田競輪場より