インタビュー

遠藤 雅也 千葉 100期 A級2班
不屈の闘志
 潔くて格好いい。やるべきことはただ一つ、逃げることだけ。連に絡んだときの決まり手は逃げが100%。まくりの決まり手は1回もない。自力選手ではなく先行選手。それが遠藤だ。9月弥彦、続く青森で決勝進出を果たし、勢いよく今開催に参加してきた。予選は余裕。準決であることが起こった。結果的に小谷田公則の失格で繰り上がりの1着だったが、最初から最後まで主導権を渡すことはなかった。レース終了後感極まり、大粒の涙を人目もはばからず流した。「泣いたのは初めてです。特選組で強さを知っている日当泰之君が相手で自分の思い描くレースができた。そうしたら苦しい練習をしてきたことが頭に浮かんで。恥ずかしいです」。全てを出し切ったアスリートの涙、汗と入り交じって美しく輝いていた。決勝は地元の近藤俊明が番手でラインは4人。打鐘前から上昇してレースを作った。しかし、5番手の新井僚太郎・小林潤二にまくられ5着でシリーズを終えた。「2周逃げてそれでまくられたら、また練習すればいいんです」。本当に潔い。うだうだ敗因を並べるのではなく、負けたらそれは自分の力不足。

遠藤 雅也(千葉 100期)
 今でこそ脚光を浴びる存在に成長したが、マスコミに「遠藤雅也」という名前が登場しなかったかもしれない。100期生として卒業を間近に控えた1月の終わり。競走訓練中に落車に巻き込まれた。首の骨を脱臼骨折。1か月の入院。医師からは選手になることを断念するように言われた。それでもどうしてもプロのレーサーになりたい。不屈の闘志でデビューを果たした。「ずっとスポーツ(アルペンスキーと陸上)をやっていた五輪に出るのが夢だった。夢は叶わなかったけど、競輪の世界でも他競技五輪に出場した選手がたくさんいる。そんな選手と対戦できるのはうれしい」。
 練習も独特だ。パワーマックスという台上自転車がある。一概には言えないが、大体ミドルパワーに設定しそれを3セットがオーソドックスだと言われている。しかし遠藤は「20セットやります。時間にして7時間くらい。とことん追い込みます。レースもそうだし覚悟を決めないと」。そして遠藤にはもう一つ、誰にも負けないものがある。「スポーツ理論、科学。これだけは僕が一番だと自負しています」。理論に裏付けされたトレーニング。地獄をみたからこそ思いは誰よりも強い。予選、準決は楽にクリアして決勝は当たり前になりつつある。「まだまだです」と言うが、優勝の2文字はすぐそこにあることも事実だろう。


平塚競輪場より