インタビュー

山本 直 岡山 101期 S級2班
大舞台でいずれ見せる強気攻め

山本直 岡山 101期 S級2班
 いい根性をしている。聞こえ方によっては、褒め言葉にならないかもしれないが、伸び盛りの山本の原動力はまさに「いい根性」なのだ。今期から待望のS級昇格を果たした22歳。並の若手なら「力を付けるためにも徹底先行で」とでも言うところだが、そうでないのが山本の魅力。「もちろん先行はします。でも、それは自分が勝てるから選ぶ作戦のひとつ。アピールするためにやっているんじゃない」。相手はほとんどが初対戦、キャリアも格も全然違うのに「S級戦に関しては手応えがある。走っていて楽しい」のだ。
 昇格直前のA級戦でも、決して先行タイプとは言えなかった。抑え込まれればイン粘りもやるし、初手から位置取り狙いの競走も多かった。だがそれは「何もしないで(レースが)終わるのは嫌だから。とにかく前へ攻めることだけ考えていた」という、強い勝利へのこだわりの表れ。176cm、77kgの体は決して恵まれてはいないが、どんな場面でも気後れすることのない根性が、パンパンに詰まっている。
 S級初戦の1月、松山ナイターFI。初戦で内に詰まると、自らさばいてまくり上げ3着。最終日の特選は同県の柏野智典を連れて最終ホームで反撃に来た高城信雄(兵庫)を突っ張り、堂々の逃げ切りで初白星をゲットした。続く平記念では初日一次予選、中団確保から最終バックでまくり1着突破。初のGIIIでも、臆することはなかった。今回の奈良記念は、「平の時より脚の感じがいい」と意気込んで臨んだ。一次予選は最終バックで内に閉じこめられる絶体絶命の大ピンチだったが、内をスルスルと抜けてのまくりで1着ゴール。二次予選では地元の先輩でS級S班の岩津裕介に前を任されることに。ここでも気迫の逃げで鈴木謙太郎(茨城)こそ封じてみせたが、小嶋敬二(石川)のまくりに屈し6着敗退。それでも、岩津を3着で準決勝に乗せたのだから、内容は十分だったろう。

 山本は言う。「S級なら後ろがよりしっかり仕事をしてくれる。岩津さん、柏野さんに付いてもらったが、先行しても守ってくれる安心感があるんです」。だから、勝つ手段として先行を選ぶ機会も増える。今回も二次予選の壁は突破できなかったが「まずは記念の準決勝? いや、あくまで目標は決勝ですよ」と頼もしい。今後、持ち前の強心臓でひとつひとつステップを上がり、GIの舞台で風を切る姿が見られるのもそう遠くはなさそうだ。


奈良競輪場より