インタビュー

上吹越俊一 鹿児島 99期 A級1班
戦法チェンジが見事に奏功
 上吹越が最近、めきめきと頭角を現している。これまではまくり一辺倒の組み立てで、他のラインをあてにした競走が多く、同じレースを走る同地区の追い込み選手が別線を選ぶケースも多々あった。それがいまでは、バックを取る競走を信念に置き「逃げ」の決まり手が急増しており、堂々たる自力型へと変貌を遂げた。「先行を意識するようになったのは今期に入ってからですね。逃げられるときは逃げられるようにと、自然と体が反応するんです」

上吹越俊一 鹿児島 99期
 あらかじめホームで目いっぱいに踏んでおけば、別線のカマシを浴びても中団に入れるし、誰もこなければ腹をくくって先行できる。最後まで持つかどうかが不安で、別線の動きに期待していた以前とは明らかに違う。おかげで、後方に置かれるシーンもめっきりと減った。そんな意識改革には理由があった。
 昨年の9月に街道練習中に右手首を骨折し、およそ2ヵ月間、戦線を離脱した。11月中旬の久留米から復帰したが、初日と2日目はまったく見せ場はなかった。ところが、最終日に打鐘8番手からのロングカマシで逃げ切った。敗者戦とはいえ逃げ切ったことが大きな自信になったようで「自分もあれだけの距離を踏めるんだと実感しました。そこで、まくりに構えて7、8着をするならば、先行して7、8着の方が脚もつくしいいじゃないか、と思うようになったんです」といい意味で開き直るようになった。
 そこからは小気味のいいレースで戦線を賑わす。当初はただ逃げるだけの、いわゆる棒逃げ状態も多かったが、先行のこつをつかむと段々と航続距離が増し、3着以内に踏みとどまることも増えてきた。いさぎよい競走に、追い込み選手たちも気持ちよくラインを固めるようになった。いいことずくめである。
 今年1月からのギア規制も追い風となった。これまで大ギアでの一撃に身を委ねていたまくりのスペシャリストたちが、ことごとく不発に追い込まれるシーンが増えた。先行タイプにとっては、おびえる要素がひとつ減り、マイペースに攻めやすくなったのだ。「先行して脚がついたおかげで、まくるときのスピードも増してきた」
 今年で38歳。年齢的な不安を感じることなく、このまま行けば初のS級点もみえてくる。「せっかくなので狙いたい」。集中力を切らすことなく、この先もスピード戦を繰り広げる。


松山競輪場より