インタビュー

佐川翔吾 大阪 94期 S級2班
パワフル先行復活!
 壮絶な力比べとなった。調子を落としていたとはいえ、GIで戦う歴戦の勇者・吉田敏洋(愛知)の底力はダテではなかった。風を切った佐川は、最終4コーナー手前で、たたき切られて失速した。「悔しい…」。滴る汗をぬぐいながら、それでも力を出し切った爽快感はあった。

佐川翔吾 大阪 94期
 台風一過で初夏の陽気が続いた5月13日からの和歌山FI。佐川にとってはデビューで走った思い出のバンクだった。地元の布居寛幸(和歌山)の援護もあって、2日間とも迷いなく先行勝負に出て2、1着で勝ち上がった。決勝戦も実質は吉田との2分戦。打鐘から前に出て自分の競走をするだけだった。だが吉田がペースでかけさせてくれることはなく、すかさず巻き返され7着に終わった。
 大阪の大型先行として期待されて08年7月に和歌山でデビュー。順調に11年7月にS級昇進。12年2月の静岡ではS級初優勝を飾った。しかし、そこからが転落の始まりだった。レースや練習中に落車が相次ぎ、作り上げてきた体のバランスを崩した。戻すために試行錯誤を重ねたが、完全に迷宮に入った。何をしてもうまくいかない。精神的にも落ち込む時期が続いた。A級に落ちて、今年S級に戻るまで1年半かかった。
 だが佐川は復活までの道程を前向きにとらえる。「S級で通用する自分を作るために必要な時間だったと思います。2年前に結婚して支えてくれた嫁さんや先輩、仲間からのアドバイスで考える時間もたっぷり取れたし、いろんなことも試せた。レースでも力んで空回りしていたのに、出切ってからトップスピードを維持できるようになった」と先行選手として地力をアップさせてS級に戻ってきた。2月高松FIでは3日間とも逃げ切りによる完全V(S級2度目)を決めて自信も身につけた。
 最大の刺激は同郷で同級生の稲川翔(大阪)のGI制覇だ。「むちゃくちゃ興奮しましたよ。あいつと同じ舞台であいつの前で戦いたいと心底思いました」。悩み苦しんだ時期は長かったが「先行選手としてGIの舞台で戦う」というデビュー以来の目標にぶれはない。逆境を乗り越えてスケールアップした男は再度、目標に向けて前を見据える。


和歌山競輪場より