インタビュー

稲川翔 90期 大阪
連覇に向けて
 久々の笑顔が咲き乱れた。3月・名古屋記念で落車。左鎖骨を骨折。4月GII「共同通信社杯」を含め、復帰して3場所。しかし、満足いく結果を残すどころか1着もないまま宇都宮記念を迎えた。「体はだいぶ良くなってきているんです。思い出の宇都宮ですし、気分的には楽です」と前検日からリラックスしていた。思い出の宇都宮、昨年のGI「高松宮記念杯」のことを指している。ゴール前の接戦を制し、悲願のGI制覇を成し遂げた。それがここ宇都宮なのだ。

稲川翔 90期 大阪
 初日特選。筒井裕のまくりに乗って、余裕で直線抜け出した。筒井も3着に残り2人で「優秀」への切符を手にした。「筒井さんがいい感じで仕掛けてくれたから。ただ2着に残さないとダメですね」。そうは言いながらも復帰13走目にしての1着。嬉しくないわけがない。筒井を2着に残せなかった分、少し遠慮がちだったのかもしれない。迎えた優秀は再度、筒井を目標。その筒井が並み居る強豪を相手に最終主導権を奪う。絶好の番手回りだったのだが、小松崎大地―佐藤慎太郎に捲られてしまった。だが、切り替えてからが稲川の真骨頂。ゴール前では小松崎と佐藤の中を割り、僅差の2着。明らかに今までとは違う動きを披露した。準決勝は松岡健と連係。松岡の2角まくりを直線で捕らえ、ワンツー。「宇都宮はいいですね。何がいいというわけじゃなく、僕にきっと合っているんです。走りやすいといったらそれまでですけれど」大会2勝目に自然と笑みがこぼれた。
 優勝への期待が高まった決勝。近畿は村上義、松岡健、稲川の3人が勝ち上がった。果たして並びはどうなるのか? 3人が報道陣を制して協議。結果は松岡が一番で稲川―村上。4番手に児玉広が続く形となった。小林大が先行し飯嶋則で先制。北津留―佐藤が中団からまくる展開。松岡が6番手から仕掛けるが、北津留に合わされる。稲川は松岡追走から外を伸びて3着。優勝こそおあずけになったが、GI戦線での活躍を予感させる4日間でもあった。続く取手記念は準決で敗退したが、最終日は1着。結果が欲しい選手にとって、1着がなによりの良薬かもしれない。
 そしていよいよ地元で迎えるGI「高松宮記念杯」が待っている。連覇というプレッシャーがかかる大会、それも地元。「調子は上がってきています。自分のできることをやって結果を残したい」。普段は物静かな稲川だが、宇都宮、取手の連戦を終えて、自信を取り戻したようだ。


宇都宮競輪場より