インタビュー

吉武信太朗 愛媛 107期 A級3班
伊代のスプリンターデビュー
 地元のデビュー戦は、無我夢中のまま終わった。緊張と気遣いで全くイメージ通りには踏めなかった。それでも最初の難関を無事終えた充実感はあった。

吉武信太朗 愛媛 107期
 七夕前検で行われた松山FII戦がデビューの場だった。両親が応援してくれているのは分かっていた。自分への声援の大きさで友人や関係者がいるのも分かったが、できるだけ目を合わさないようにした。初戦は前前に踏んでいって1着でゴールを駆け抜けた。準決はあっさり先行できたが、ゴール前で失速して辛うじて3着に残り、冷や汗をかいた。
 迎えた決勝戦は、激しい主導権争いとなったが、同じくデビュー場所で先行した滝本奉行(岡山)の番手にはまる形となった。4コーナー手前では「デビュー場所V」が頭をよぎった。しかし、滝本には踏み直され、さらに後続の2選手にも追い込まれて4着となった。レース後は先輩や周りの選手の激励やねぎらいの声に悔しさをあらわにして引き揚げてきた。
 「一瞬行けると思ったから…。でも全然踏めてませんでしたね。デビュー3戦とも4コーナーを回ってから足がパンパンに張って、力が全然入らなかったです。心が行けると思っても、体が全く付いていけない状態でした。これがデビュー戦なんですね」と最後は納得の顔ものぞかせた。
 愛媛の今治南高校ではインターハイに出場するなど陸上のスプリンターとして鳴らした。ただ大学に進んでまで陸上を続ける気はなかった。ただ体力を生かせる職業に就きたかった。進路に悩んでいた吉武に陸上の顧問が競輪選手を薦めてくれた。当初は適性で受けたが不合格。通っていたジムの関係者に現在の師匠である小川祐司を紹介してもらって本格的にピストの練習を始めて、107期で合格した。
 目標は、自力選手として一度も降格することなくS級に上がること。憧れは武田豊樹だ。「あの年であり得ない強さ。でも長く太く続けていきたいし、励みになりますね。スプリントには自信があるけど長く踏めないし、課題は多いけどコツコツと克服していきたい」。伊代のスプリンターは坂の上の雲を目指して今踏み出した。


松山競輪場より