インタビュー

中野彰人 和歌山 93期 S級2班
それでも前へ―
 とにかく前へ。自分のスタイルを貫くため、ラインのため、勝つために―。レースごとに優先順位はあるかもしれないが常に念頭に置いて戦ってきた。162cmの小さな体でデビューから先行基本の自力勝負を貫き、S級を張ってきた誇りと闘志はダテではない。

中野彰人 和歌山 93期
 ようやく強烈な暑さが和らいだ9月11日からのS級シリーズ。だが中野の燃える闘志に衰えはなかった。後手に回った初日を何とか3着に追い込んで勝ち上がった準決勝で力を爆発させた。人気を背負った石丸寛之(岡山)のまくりに合わせて踏み込み、番手の香川雄介(香川)をさばいて追走。最後の直線で一気に抜き去った。だが快勝にも「やっぱり主導権をとってないし、自分のレースじゃなかった」と納得の表情はみせなかった。決勝は、中村一将(兵庫)に前を任されて迷うことなく打鐘先行。中村とラインで続いた内藤宣彦(秋田)との直線勝負を演出した。勝ったのは内藤だったが、「自力でも強い中村さんが前を任してくれたんで逃げることしか考えてなかった」とラインに貢献した走りに満足の笑みを浮かべた。
 6月、川崎FIで待望のS級初優勝を飾った。決勝は勝たないとA級陥落の危機に追い込まれていた。練習仲間の稲毛健太(和歌山)の番手戦で勝ち抜いた。「共に汗をかいてきた後輩の頑張りがうれしかった…」と表彰式では号泣した。徹底先行で彗星(すいせい)のごとくS級に駆け上がったが、度重なる落車やけが、大ギアへの対応にも遅れ伸び悩む時期を経てようやくつかんだ優勝だった。「まだ頑張れる」と後輩に背中を押されて気持ちをリセットできた。ハードワークで知られる池田智毅グループでの練習意欲も大きくなった。
 番手戦での優勝だったとはいえ先行選手へのこだわりは捨てていない。「流れで位置を取る競走も必要なのは分かってる。でも自分は先行してなんぼやと今でも思ってる」。デビューからずっと憧れている村上義弘(京都)の存在も大きい。「義弘さんも先行は少なくなったけど、前で戦う時は、一度は動いて主導権を取りに行くでしょう。あの姿勢なんですよ」。ニュースタイルも模索しながら気持ちはいつも〝先行〟を胸に刻んで走り続ける。


高松競輪場より