インタビュー

本郷雄三 熊本 99期 A級1班
挫折を乗り越え、再度S級を目指す。
 本郷雄三が復活への道を歩んでいる。今や直近4ヵ月で98点台の点数を有し、今年だけで5V。12月に広島で開催されるレインボーカップA級ファイナルには4番手で選出された。上位の古屋琢晶(90期・山梨)と久米康平(100期・徳島)は前期S級に在籍しており、貯金をキープしながらの選出。A級からたたき上げで地道に点数を重ねた4番手だけに、その価値は大きい。

本郷雄三 熊本 99期
 「今年の初めは82、3点台まで点数を下げていました。『9、9、欠』とか普通にやっていたし、戻した方でしょう」
  昨年の1月に満を持してS級入りを果たしたが、スピードや持久力とすべての面において力の違いを実感し、わずか半年でA級へ逆戻り。結果の伴わぬもどかしい状況が続き、長らくくすぶっていた。「練習にも身が入らず、さぼり気味になっていた。競輪場に行って軽く乗っただけで、練習した気になったりして…」。
 その場限りの満足感や達成感に納得するだけでは、自分の力には直結しない。次第に師匠の西川親幸(57期・熊本)たちとのグループ練習も休みがちとなり、気持ちも脚も落ちていくばかりだった。
 視界の開けぬ近況を打破せねば、ずるずると落ちていく。尻に火が点いた本郷は、同県の松川高大(94期)との練習に活路を見出した。松川とは同級生で、プライベートでは酒を飲み、飯をくい、ふざけ合う間柄。ともすれば、なあなあのぬるま湯に浸かってしまうことも危惧したが、そこは「松川はプライベートとは別で、練習中はすごく真面目」と、熊本競輪界で一番の練習量を誇るといわれる松川の資質と器量に救われた。
 ちょうど、そのころの松川は、デビューしたての弟子・野口大誠(105期)を鍛えており、自身も含めてより激しい練習に取り組んでいた。練習グループは3人で、本郷はひとりだけ置いていかれるわけにはいかなかった。
 「今までは午前に一本だけもがいておしまいだったけど、大誠から『もう一本行きましょう』と言われたり。ああなると、もうさぼれない(笑い)。2人が開催でいないときでも何をすればいいか考えたりと、自分の意思で練習に取り組むようになった」
 いきなり、練習を始めても、長らく溜めたツケを返すのには時間がかかる。そこで、野口が1・2班へ上がり、レースで一緒に連係するまでに脚を戻す、と目標を定めた。地道に練習を重ね、今年4月の小倉ミッドナイトで機会は訪れた。決勝で連係し、あとからかかる野口の重たいまくりに食い下がって見事にワンツー。「まくりの加速がすごくて、まったく差せなかった。でも、あれからですよ、自分の成績が上がりだしたのは」。切磋琢磨した後輩と最高の結果をだしたことで、今までの苦しみから解放された。自信を取り戻し、ここから反攻へのスイッチが入った。
 来期はS級の点数を取れていないため、このままいくとA級のまま。だから、レインボーカップでは何が何でも3着以内に入らねばならない。挫折を乗り超え、心身ともに成長した本郷の巻き返しは見どころ満載だ。本当は、レインボーまでに9連勝するのが望ましいが、さすがにそれは厳しいか。


熊本競輪場より