インタビュー

A級の化け物って呼ばれたいんです
吉川誠 神奈川 86期 A級1班
 吉川をひと言でいうなら「強いけど安定感がない」だった。だったというのは今年に入り、課題だった安定感を増したのだ。とは言ってもA級での話。吉川の実力を考えればA級で負けていたら恥ずかしい。S級の優勝経験も豊富。特別競輪にも出場していたのだから。その吉川がホームバンクの戦いに臨んだ。S級からA級に降級した初戦の久留米は8着スタートながら、準決を1着でクリアし見事優勝を飾った。2場所目の西武園も優勝。特進をしてもいいほどの強さで2連覇。

吉川誠 神奈川 86期
 3連覇がかかる今シリーズ。前検日から「吉川節」は全開だった。「特進ですか?全然考えていませんよ。今度上に戻ったら点数を気にするのではなく、S級で勝ち負けができるようにならないと意味がないんです。タイトルだって諦めていませんから。S級で戦うのが目標ではないんです」。そして次に出てきた言葉が吉川らしい。「言葉は悪いですけど、A級の化け物って呼ばれたいんです」。要するにA級では圧倒的な強さを誇りたいということ。
 3連勝で3連覇。それが今シリーズ、自分に課したものだった。特選は坂本周が先行し、吉川は7番手。いつ仕掛けていくのかみていたが動く気配は全くなし。「自分のタイミングで行こうと思っていたから」。最終3コーナー過ぎから踏み出したが、マークした出口真はインに切り込み、吉川は外。ゴールは出口が1着で吉川が2着。俗に言う現地集合というやつだ。完全Vの野望は断たれた準決。三好恵、三浦平が相手なら力が違う。本当はメンバー的にも先行してほしかったのだが、やはり捲り。「なかなか先行させてもらえないですね。もちろん逃げるつもりだったんですけど」と勝っても笑顔は見られなかった。迎えた決勝は特選の再戦といったメンバー。大方の予想を裏切って逃げたのは荒井春。坂本周は7番手で4番手に吉川。一番強い自力型が4番手、勝ってくださいの展開になった。最終バック手前からまくり上げると、マークした出口は離れるほどのスピードで圧勝。まくり3連発で3連覇を達成した。「たまたまいい位置が取れたから良かったけどまだまだです」と反省も忘れなかった。
 以前はレース前に色々と組み立てを考えていた。それがはまる時はいいが、想定外のことが起こった場合は対処できていなかった。それが今は「深く考えません。レースの中でのひらめきですね。ここでイケって思ったら体が勝手に反応します」。確かに吉川は考えすぎる面が多すぎた。そこに気づいたのも、上のステージでタイトル争いに加わりたいからに違いない。そしてS級に上がったばかりの畑段嵐士から刺激を受けた。「めちゃくちゃ強いですよね。彼の走りを見てオレもって思いました」。34歳という年齢は競輪選手として一番、油が乗っている時期。早くA級を卒業しS級で暴れ回っている吉川を見て見たい。


平塚競輪場より