インタビュー

坂本貴史 青森 94期 S級1班
大器覚醒へ
 眠れる獅子が覚醒するか。16年1月8日から小倉で初めて3日間制で行われたエボリューションの圧勝劇はそんな予感を感じさせた。ドームのカクテル光線に普段は見慣れないブルーのカーボンフレームが鮮やかにきらめき、勝った坂本をたたえていた。父から受け継ぐアスリートの血が、競技用のカーボンフレームを手にして3日間ともレースを支配した。そんな強い完全Vだった。

坂本貴史 青森 94期
 初日は前受けから成り行き先行で押し切った。2日目は5番手からあっさり2角まくりを決めた。決勝は前受けから先行。ほかをまくらせず、番手絶好だった野田源一の猛追を振り切った。「最初は競技用フレームで戦う以外は、普段の競走とやることは変わらないと思っていた。でも初日戦って、絶対に勝ちたいなと思いました。エボリューションの3日制は初めてだったし、最初の優勝者になりたい気持ちが強くなった」。淡々と話す中にも坂本なりに刺激を受けたことをうかがわせた。
 競技者としてロス五輪銅メダリスト。競輪界でも数々のタイトルを手にしてきた坂本勉を父に持ち、鳴り物入りで輪界に飛び込んできた。順調にS級にも上がり、ナショナルチームの一員にもなった。10年2月、玉野の東西対抗戦の裏番組として行われたFI準決勝で深谷知広と赤板から始まった火花の出るような先行バトル(2周もがき合って1着深谷、2着坂本)は今でも記者間でも語り草だ。そのまま一気にスターダムにかけ昇ると思われたが、伸び悩んだ。昨年はナショナルチームからも外されて悔しい思いも味わった。
 「S級に上がるまでは順当だったけど、やっぱり自分でもそこから伸び悩んでいるなという感じは持ってます。でもナショナルチーム監督の父のもとで確かな練習をずっと続けているし、必ず成果が出ると信じてやってます。強い練習仲間の新山響平(107期卒期チャンプ)にも刺激を受けてます。東京五輪もあるし、ナショナルチーム復帰も視野にあるけど、今は自分の持ち場の日本の競輪で結果を出したい。競輪で勝てれば、世界のケイリンでも戦える選手になれる」。デビューからぶれることのない「父を越える選手」になるという高い志は変わらない。


小倉競輪場より