インタビュー

野口正則 奈良 105期 A級1班
大歓声で風を切る!
 誰にも主導権は渡さない。誰もいないスタンドでも自分の先行に胸をわくわくさせるファンをイメージして常に風を切る。子供の頃から競輪選手に憧れていた自分の想いを重ねながら…。

野口正則 奈良 105期
 16年4月、2場所連続Vを飾って高知のミッドナイト競輪に乗り込んできた。3月の岸和田は、A級1、2班戦での待望の初優勝だった。徹底先行の自分のスタイルを貫いた逃げ切り勝ちに、ゴール後はガッツポーズが飛び出した。自然に出た歓喜の表現だった。「決勝でいつも勝ち切れなかったから本当にうれしかった」と振り返った。続く大垣も他のラインに影を踏まさないレース内容を貫き完全Vで自信も身につけた。
 160センチに満たない体は一般の人に交じっても目立たない。しかし、レースの先頭で風を切る姿は、堂々と大きく見せる。競輪学校時代から先行を貫いてきたメンタルの強さが、支えになっている。高知で初対戦した同期の坂本周作(青森)も「学校時代の順位は僕が上だったけど、先行にこだわって戦っていた野口さんの方がはるかに強くて評価も高かった」と認める。
 高知の初日特選は、先行したが坂本にまくり追い込まれて3着に敗れた。準決は2着、決勝ももちろん逃げたが、横関裕樹のまくりに屈して7着に終わった。「やっぱり(ミッドナイトの)7車立ての先行は難しいですね。慣れない500バンクにも戸惑いがありました。でもまた勉強にもなりました。苦しい状況でも勝ち切れないと、次のS級戦でも通用しないですから」と前を向く。
 7月からのS級昇格も決まっている。それを見据えた競走が続く。奈良バンクでの練習環境は申し分ない。師匠の武田和也も徹底先行で鳴らす。練習仲間には中井太祐・俊亮兄弟や三谷竜生ら先行選手として売り出し中の若手が多く刺激には事欠かない。「師匠はいつも僕の走りをみてアドバイスをくれる。S級で通用するために〝小さな競走〟はするなと。それを肝に銘じて走ってます」
 高校、大学とロードの選手として持久力と地脚を付けてきた。その特性を生かし、風を切って粘り込む。まずは自分の先行がS級の舞台でどれだけ通用するか。そして今度は無観客ではなく、大声援を背にさっそうと風を切る自分を夢見て、もがく日々が。


高知競輪場より