インタビュー

小野俊之 大分 77期 A級1班
「新人・小野俊之」の2017年が始まった
2017年の競輪界、新春ビッグニュースのひとつに「小野俊之がA級へ」がある。まさかのA級は19年5ヵ月ぶり。これまで、きらびやかで活発なS級の雰囲気、そして神経を研ぎ澄まし極限まで追い込んで勝負に挑む独特の緊張感や、ライバルたちとのせめぎ合いといった高いレベルの攻防を心底楽しんでいた小野にとって、A級の景色はどう映るのか?
「年末くらいには気持ちもふっ切れた。新人再デビューのつもりでゼロから叩き上げていくつもり。今の(A級の)若い子は強いが、自信はあります」

小野俊之 大分 77期
稀代の職人マーカーとしてS級上位に君臨し幾度の好勝負を演じ、競輪グランプリ制覇までも成し遂げた大スターが、殊勝な心構えでA級へ挑む。もちろん「(大竹)慎吾さんが9連勝でS級に帰ってきたこともあったし、自分も続ければいいね」と、2014年9月に49歳にして9連勝を達成してS級へと返り咲いた同県の大先輩を例に挙げ、早々にS級復帰を目指している。
「早くまた上で戦いたい。特に村上(義弘)さんと勝負したい。昨年末、グランプリシリーズの立川で村上さんの優勝に立ち会い、俺も以前(グランプリで)一緒に戦ったのだと感じるものがあった。ただ、俺はその後の取り組み方とかを間違えていたように思う。それが今の村上さんと自分の差。だから今はA級で一日、一日の積み重ねを大事に、S級に戻ったときタイトルを取れるように準備しておく。何か運はあると思っているから(笑)」
注目の今期初戦は9日からの松山ナイターだった。初日特選は福岡の小川賢人の番手からまさかのまくりを放ち、ファンのみならず選手や関係者ら見るものすべての度肝を抜いた。「俺のスタイルではなかったけど、清水(裕友)君が強いし、彼を倒せば見えてくるものがあると思ったので。勝てなかったが併せられて良かった」と初戦を飾れずとも、準決は絶妙なタイミングで小川を交してワンツー、そして決勝は圧巻の中割りで貫禄のVを達成と、新生・小野俊之を広く知れ渡せるのには十分すぎる熱い3日間だった。
幸先いいスタートを切ったのはいいがこの先、心配な点がひとつだけある。それは小野の高度なテクニックとスピードに相手が堪えられるかということ。まくった自力選手を止める強烈なブロックやけん制、直線での強烈な中割りなどに受ける側が耐えられなければ、落車を招いてしまうこともある。競走得点が100点以上あればほぼ安泰といえそうだが、失格に伴うマイナス3点も積み重なると足かせとなりかねない。
本来の持ち場はA級ではない。今年S級S班となった熊本の中川誠一郎が小野のことをこう言っていた。「小野さんが付いてくれたときの安心感は相当なもの。レースだけではなく、検車場や控え室、宿舎に小野さんがいるだけで九州地区は引き締まる。特にビッグでは」。ファンのみならず、選手仲間も精神的支柱として小野の復活を待っている。凄みにあふれる仕事を見せつけ、再び競輪界をリードする豊後の虎の雄姿をもう一度みたい。


別府競輪場より