インタビュー

布居翼 和歌山 109期 A級3班
試練を乗り越えろ!
神様は越えられない試練を人には与えない。どこかのドラマみたいなフレーズだが、神様は、天性のスプリンターにデビュー時から試練を与えた。現在もS級で活躍する名スプリンターの布居寛幸(72期)を父に持ち高校時代から自転車のスプリント競技で頭角を現した。国体準Vなど全国でも華々しい活躍を残し鳴り物入りで16年7月の松阪でデビューを迎えた。注目されたデビュー戦は、何と落車棄権。仕掛ける前に落車棄権。さらに地元和歌山で迎えた第2戦も初日落車棄権して同じく途中欠場となった。

布居翼 和歌山 109期
そのダメージを引きずったまま、力を出し切れない競走が翌年の春先まで続いた。先行しても粘れない。まくりに構えると不発に終わる。レースで悪循環が重なった。レベルが高いと評判の109期の同期は次々と勝ち名乗りを上げていた。特にジュニア時代からライバルで仲の良かった太田竜馬の活躍に焦りが募った。「デビューからすぐに優勝するつもりだったし、自分の成績が信じられなかった。もう気持ちだけが空回りして、早くも勝ちにこだわって追い込みに変わろうかと思った時期もありました」と当時の気持ちを吐露する。
焦るにはもう一つの理由があった。S級で活躍する父と同じ舞台に立って連係したいという夢があった。「父もいい年。S級にいる間に自分も…」。息子が同じ競輪選手になったことを心から喜んでくれた父の思いにも応えたかった。ようやく光が見えてきたのが17年3月の高知FIIからだ。連勝で初の決勝進出。決勝は7着に終わったが、先行基本のスタイルに迷いがなくなった。4月の岸和田FIIでは決勝2着と優勝まで後一歩まで迫った。
まだまだチャレンジ戦でも組み立ては甘い。それでも「先行して粘る距離が長くなっている手応えは感じている。練習はS級選手が多くいる池田智毅さんのグループで充実しているし、今の内に地力をつけてS級で長く活躍する選手になりたい。もう結果にこだわらずに焦らないことにしたんです」と話す。父も多くは語らない。「自分ではい上がってこい」。課題は多くても素材は誰もが認める原石だ。自分で磨き上げて試練を乗り越えてみせる。


和歌山競輪場より