インタビュー

渡邊秀明 神奈川 68期 A級1班
プライド
実力は文句なし。ただ、人が好すぎる。先頭を買って出て後ろを優勝に導いたのは数知れず。人を引っ張ったのだから次は自分。しかし、それがなかなか順番?が回って来なかった。存在感はピカイチの渡邊。その渡邊がA級に陥落した。決して力が衰えたのではなく、度重なる落車で体がぼろぼろになっていたためだ。

渡邊秀明 神奈川 68期
降級初戦の宇都宮は特選2着。準決は1着で決勝に駒を進めた。優勝の期待がかかった決勝は3着に終わり、降級初戦でのVは成らなかった。「A級は皆強いです。そんな簡単に優勝なんてできません」。宇都宮終了後に話していた。迎えた2戦目はホームバンクの平塚。同県の後輩・加藤健にマークした特選は、一瞬離れながらも3着。苦しそうに検車場に戻ってきた。準決も加藤のまくりに付いて2着。決勝はみたび加藤と連係。加藤が打鐘から主導権を握り、4番手は大谷靖と早川成の並走。渡邊にとってはこれ以上ない展開だった。4コーナーを回ってさあ、抜くだけ。誰もがそう思ったが、8番手からまくってきた小野裕に屈した。2着と思いきや、4着。「本当に甘くない」と言うのが精いっぱいだった。
降級2場所で優勝0。しかし渡邊はプロとしてのプライドを誰よりも持っている。A級の落ちたとき、S級の証しである赤い星のレーサーパンツを捨て、A級の緑色の星のレーサーパンツを6枚買った。「A級なんだしS級のものを持っていても仕方ない。実は神奈川の先輩である土師田(和弘、昨年7月に引退)さんを真似たんです。土師田さんがA級に落ちてから、S級のものはいっさい身に付けていなかったんです。格好いいなあって」。A級なのにS級の練習着やレーサーパンツで練習する選手はいる。それが渡邊には考えられなかった。いかにも未練たらしい。「プライドですよプライド。現状を受け入れながら、必ずS級に戻る、その決意の表れなんです。土師田さんもそう思っていたんでしょうね」。
結果はまだ残せていない。肉体的な衰えもあるだろう。しかし、プロとしてのプライドを持ち続ける限り、渡邊は必ず赤い星のレーサーパンツでバンクに戻ってくると確信した。


平塚競輪場