インタビュー

小森貴大 福井 111期 A級3班
師匠に日々成長する姿を見せたい
つくづく、この世は人との出会いで動いていると思う。NPB(日本野球機構)からのドラフト指名を夢見て、ひたすら白球を追っていた小森。大学卒業後、BCリーグ・福井に投手として入団したが、どこか熱くなりきれない自分がいた。そんな時、福井の闘将・市田佳寿浩(76期)との知己を得る。自分の「仕事」に取り組む姿勢―レベルが違っていた。市田にあこがれ、師事。競輪に転向することに迷いはなかった。「受かるまで3年かかったし、競輪学校では他との差を感じた」が、徹底先行を貫いて111期の卒業記念は決勝戦まで進み、6位。だが、応援に来てくれるはずの師匠は、スタンドにいなかった。直前の高松「ウィナーズカップ」で落車し、大腿骨骨折などの大ケガを負って入院を余儀なくされたのだ。レース後は「泣くつもりじゃなかったが、師匠にこの1年で成長した自分を見てほしかった…」と、あふれる涙を抑えることはできなかった。

小森貴大 福井 111期
7月の富山でのデビュー戦は、完全優勝で飾った。ここまで21走して15勝、優勝3回。特に今回の和歌山決勝では、在校中に先行回数を競いあった皿屋豊(三重)との初対決で注目を集めた。結果は皿屋の番手にはまる形で、小森が差し切って1着。前場所に続いての完全Vで、次戦に特別昇班がかかることになった。「ここまでは順調といえば順調ですね。でも一戦ごとに課題が見つかる。他のラインとの車間の取り方だったり、位置取りや組み立て…まだまだです。練習していく中で力は付いていると思うが、もっと出せると思っている」と、あくまで謙虚。12月には28歳になるが「年齢的な焦りはない。特別昇班を目指してやっているが、それで小さいレースにならないように。今日より明日、っていう感じで成長していきたい」と目を輝かせる。
師匠の市田は、何度もケガで倒れ、そのたびに立ち上がってきた不屈の男だ。今はまだ、復帰に向けて苦しい日々が続いているという。競輪選手になった小森は、弟子として思う。「練習の力をレースで出せるような準備であったり、心構えであったり…市田さんの姿を見てきました。自分は野球でやりきれなかった部分があった。その分を競輪で、という思いはある」。だから、心に誓うのだ。師匠が復帰したときは、少しでも近い位置にいたい。いつか同じ舞台で―師弟の気持ちは、きっとつながっている。


和歌山競輪場より