インタビュー

野口裕史 千葉 111期 A級2班
元陸上・ハンマー投げの日本王者。
8月にチャレンジからA級2班に特別昇班した野口裕史。彼は、元陸上・ハンマー投げの日本王者。残念ながら世界選手権の参加標準記録は突破できず、その先にあったリオデジャネイロ五輪も断念し、この世界に飛び込んできた。ゼロからのスタートどころか、マイナスからのスタートだった。

野口裕史 千葉 111期
しかし、トップアスリートは違う。競輪学校時代は12勝で27位という成績だったが、卒業後はトントン拍子、快進撃を見せ特別昇班した。ところが初戦の西武園初日でまさかの落車。だが続く佐世保ミッドナイトは無傷で決勝に駒を進めて3着。「いきなり落車でしたが、佐世保で結果を残せて良かった。A級でも戦える手応えはつかみました」。決勝3着の次はA級初Vのはずが、3場所目のいわき平決勝でまたまた落車。前回の前橋は決勝にすら進むことはできなかった。
そして平塚開催。前検日「上がって4場所で2度の落車は正直きつい。けが自体は軽傷でもバランスが微妙にずれてしまう。何より恐怖心ですかね」。体の傷は治せても、メンタルな部分は難しい。そんな話をしていたら、予選を圧勝した後の準決でまたもやゴール前で落車。何とか3着で決勝には進出したが、それにしても落車が多すぎる。「受け方というか、それはお互い様なのですが難しいです」と決勝進出にも浮かない顔。左半身の打撲・擦過傷、包帯が痛々しかった。
それでも決勝は千葉勢が野口を含めて3人が勝ち上がった。坂木田雄介と花田将司。全員が自力型だが野口が先頭で坂木田が2番手。花田が3番手でまとまった。大方の予想は野口が早めでも先行して坂木田が二段駆けに持ち込むものだった。しかし、蓋を開けてみれば野口が前を取った。こうなったら突っ張り先行しかない。そう思ったのだが、佐藤雅春が赤板で上昇すると野口は7番手まで下げた。最終ホームから仕掛けたが4番手まで。見せ場も作れず9着でシリーズを終えた。「情けないです。前を取ったのは坂木田さんから『普段通りの競走をすればいい』と言われて。佐藤さんが強いのは準決で戦って分かっていたのですが…」と唇をかんだ。
キャリア不足。敗因はこれに尽きる。仕掛けて行った時もイエローライン付近を走っていた。そこを走るということは力を相当ロスする。けん制されて落車をするイメージが脳裏から離れないのだろう。「確かにそうかもしれませんが、それじゃプロとしてダメ」。潜在能力の高さは誰もが認める逸材。その才能を開花させるには、やはり経験が一番になる。「プロである以上、レースが終わって勉強になりましたは言いたくない。そうならないためにもしっかりした競走を心がけます」。今シリーズで目立ったのは予選だけ。残り2日は存在感が薄かった。それでも向上心は衰えていない。落車に対する恐怖心さえ取り除ければ、S級に上がる日も近いはずだ。


平塚競輪場より