インタビュー

植草亮介 千葉 90期 A級1班
宝の持ち腐れ。
いいものを持っているのに、それが結果に結びつかないのが植草だ。車券を買う方も、そのレースぶりにイライラしてしまう。競走得点は90点前後とS級が見えて来ているが、パッとしない。その植草の近況を平塚、松戸、川崎と見てみた。

植草亮介 千葉 90期
まずは平塚。予選は売り出し中の同県、染谷幸喜と同乗。もちろん圧倒的な支持を受けていた。しかし蓋を開ければ、染谷が主導権を奪えず最終ホームで切り替えた。切り替えたまでは良かったが、その後は何もできず6着。「自分で仕掛けなければいけなかった」と反省したとおり、ハートの弱さが出てしまった。2日目は山本淳の先行に乗り、余裕の差し切り。最終日も山本と連係。結果的に山本は出切れず4番手にスイッチしたが、その後は初日と同じ、流れ込みの4着で終わった。続く松戸は予選を2着でクリアしたものの、準決で敗退。前回の川崎は特選スタートだったが、またもや準決で敗れた。
植草のレースを見ていて感じることは、目標がいた時はそれなりの競走を見せるということだ。最近は大敗もなくなり、3日間で1度は連に絡んでいる。ただ、それだけでは上のレベルでは戦えない。どうしたらもっと強くなれるのか?練習はおろそかにはしていない。結局「僕はメンタルなんです」の言葉通り、シビアになり切れていないのだ。
だが、何もしていないわけではない。同期の松田優一(茨城)を通じて、武田豊樹を紹介してもらい、そこで武田からフレームをプレゼントされた。「感激でした。雲の上の存在の武田さんからフレームを頂けるなんて。実際に武田さんが使っていたものだから、名前が印字されているんです」。レース前に刻まれた名前を見ると気合が入る。恥ずかしい競走はできないと心に決めて臨む。「僕のレースを見ていてくれるわけはないけど、僕が情けない競走をしたら、武田さんに恥をかかせてしまうみたいな気になる」。今までの植草なら、そんな感情は持たなかっただろう。しかし今は「S級で勝負したい。武田さんに恩返ししたい」気持ちが強いのだ。
過去、S級に手が届きそうな時もあった。だが、欲がないのか、チャンスをモノにできなかった。「競輪選手である以上、S級に上がらないとダメですね」。能力はある。レースセンスもある。足りなかったものはがむしゃらな気持ちだけだった。デビューして13年。もうA級は卒業だろう。


平塚競輪場より