インタビュー

梅川風子 東京 112期 L級1班
風を切り、風になる
 「先行逃げ切り」は競輪における永遠の美学である。およそすべての選手がその格好よさにあこがれ、そのほとんどの選手が辛さにうちひしがれて諦めていく。それでも先行にこだわるのは、イコール強さの証明だからに他ならない。ラインのないガールズケイリンにおいては、番手の援護が見込めない分、さらに逃げ切りは至難。それでも―。梅川もまた、先行の魅力にとりつかれた一人だ。

梅川風子 東京 112期
 自身初のガールズ特別レース参戦となった7月松戸「ガールズケイリンフェスティバル」。精鋭21人によるトーナメントは、あるいは「グランプリ」よりも厳しい戦いといえるかもしれない。梅川は「自分はチャレンジャー」と腹をくくって、普段通りの競走で挑むことを決めていた。初日の予選1、1R。V候補の児玉碧衣(福岡)の上昇に合わせ、打鐘で突っ張り先行に持ち込むはずが、一瞬緩めたスキを見逃さず児玉が叩いて出る。番手にはまった梅川は最終バックで踏み込むが、梶田舞(栃木)、小林莉子(東京)に追い込まれて3着。「突っ張るのも考えたが、初手でいい位置が取れなかった」と、自分の競走ができなかったことを悔やんだ。
 山梨学院大まではスピードスケートに打ち込んだ。500mで全日本学生チャンピオンに輝いた実績もあるが、「スケートを引退する5か月前から競輪転向を決めていた」。目標の選手は先行日本一の奥井迪(東京)。誰よりも風を切って、勝ち星を重ねる姿に魅了された。日本競輪学校でも先行にこだわって30勝。ゴールデンキャップ、卒業記念女王も獲得した。デビュー後はやや苦戦したものの、競走スタイルを変えることはなかった。
 2日目の予選2、3Rでは小林優香(福岡)と対戦。正攻法から先行に持ち込むはずが、打鐘で吉村早耶香(静岡)に叩かれる。最終ホームで、すかさず番手から出て「逃げ」の決まり手は付いたが、小林の上がり9秒6のまくりに屈し2着。「力の差は感じたが、自分の仕掛けはできたので」と、前を向いた。
 最終日、決勝戦。スタートを取った石井寛子(東京)に迎え入れられて正攻法。打鐘で誘導員が外れると、そのまま先行態勢へ。最終ホームでは高木真備(東京)の反撃を合わせ切り、先頭で3コーナーを通過。初出場初Vが見えた4コーナーで、石井に内を突かれてしまう。梅川がほんの一瞬、外帯線を外したところを、歴戦の石井は見逃さなかった。「外したつもりはなかったが…。まだ挑戦者のつもりで頑張りたい」。初めての大舞台で逃げて、自分をアピールすることはできた。選手になった時の目標は「魅せて勝つ選手になる」こと。今度は「勝つための先行」に磨きをかけて、女王の座を目指す。


松戸競輪場より