インタビュー

村田雅一 兵庫 90期 S級2班
ピークはこれから
 小柄なマーカーが、輝きを放ち始めた。なかなかS級に定着できなかった村田が、今年に入って急成長。一躍スポットライトを浴びたのは8月の松戸記念。一次予選から2、1、1着の快進撃を見せる。準決勝は柴崎淳の後位から内へ切り込み、直線伸びての白星だった。初の記念決勝も的確なコース取りで3着。「優勝を狙って走った結果」が、初の「競輪祭」出場をたぐり寄せた。「昨年の今頃がA級1班だったことを思うと、今の自分が信じられないですね。S級の点数が取れるかどうかだったのに」。記念のあっせんも増え、G3だけで今年8勝。近況の競走得点も自己最高を更新し続けている。

村田雅一 兵庫 90期
 好調の秘訣は減量にあった。体重を10キロ絞ったことで、練習量が格段に増えた。レースでも脚にキレが出て、成績はみるみる上昇。「かみ合ってきたな、という感じ。記念ではコンスタントに準決勝に乗れているし、チャンスをモノにできるようになった」と、自信も付いてきた。
 中1日の追加参戦となった9月の向日町記念でも随所に存在感を発揮。二次予選では同い年の藤木裕(京都)が打鐘4コーナーから一気に巻き返し、しっかり付け切って2着。この開催で優勝した藤木からは「村田が後ろにいることであの仕掛けができた。早めに踏んでも残してくれる安心感がある」と絶賛された。だが、悔やまれるのは準決勝。三谷竜生(奈良)―村上博幸(京都)の3番手。三谷が最終ホーム7番手からまくり、ライン3車で上位進出か…と思われたが、直線入り口で杉森輝大(茨城)に阻まれて6着。「余裕があったのに…。もっと内を締めて回っていれば。取りこぼした」と顔をゆがめたが、準決勝進出で満足していたらその悔しさもなかったはず。自分への要求水準は、確実に高くなっている。
 「競輪祭」は、13年の「寛仁親王牌」以来、自身2度目のG1。「ぼくももう34歳ですからね。どんだけ遅咲きやねん、て(笑い)。でも、お世話になっている松岡健介さんや、同県の後輩たちも頑張っている。そういう中で自分の果たすべき役割はあると思うし、しっかりやっていきたい。でも、地道に、ですね。まずはケガをしないこと」と、進化を焦る様子はない。人を輝かせるのは、ツキでも運でもない。努力の土台がなければ、花は咲かない。柔和な笑顔の奥の芯の強さが、これからピークを迎える村田を支えていく。


向日町競輪場より