インタビュー

吉武信太朗 愛媛 107期 A級1班
無心に風を切る!
 緊張して震えが止まらない。レース前はいつもそうだ。本当に嫌になる。でも発走台に立つと不思議と震えが止まる。迷いなく風を切る。自然に体とペダルが一体化してスムーズにバンクに力が伝わる。もがいて全力を出し切った後の快感は何物にも代え難い。だから先行選手は辞められない。

吉武信太朗 愛媛 107期
 107期生として、15年7月に地元松山でデビューした。特別昇班、昇級こそなかったが19年1月には初のS級の舞台に立つ。「ここまでは順当にS級になれたと思います。何よりも先行という自分のスタイルを貫けて上がれたことがうれしい。どこまで通用するか分からないけどS級に上がっても先行して力を出し切る競走を続けたい」。
 18年11月26日からの小松島FIに参戦した。冬の訪れとは裏腹に日中は厚着をしていると汗ばむほどの陽気だった。ここでも迷いなく風を切る姿があった。この時期に珍しく海原から厳しく吹き付ける風もなく先行選手には絶好のコンディションだった。初日特選は、地元の吉川嘉斗ら3人の四国勢を連れて打鐘過ぎから一気にカマして主導権を奪った。ゴール前で吉川に差されたが1番人気に応えるワンツーを決めた。準決も最終ホーム手前からの発進で、今度は坂田章の差しを許さずに押し切った。決勝も同じ四国3人を連れて発進。自身は3着だったが、番手、3番手で上位を独占した。
 18年は、先行選手として自信になったレースが2度あった。6月の地元松山FIの決勝。完全Vで勝てばデビュー通算100勝を決められるレース。後輩の松本貴治らに「絶対に100勝決める」とレース前に公言しての優勝だった。そして10月の和歌山FIIの決勝は正攻法に構えて赤板から突っ張ってそのまま押し切った。「両レースとも相手が強かったし、S級で戦う上でも自信につながった」と話す。
 小松島ではS級で戦う師匠・小川祐司と同時参戦。高校卒業時からレーサーを目指し、競輪学校に合格するまでの3年間を親身になって鍛えてくれた師匠だった。S級のレースで「師匠の前を走る」のも大きな目標だ。「緊張するとは思うけど、いつもと同じように迷いなく仕掛けたい」。支えてくれた両親や師匠、練習仲間の思いも背負い、S級でもまずは無心で風を切り裂く。


小松島競輪場より