インタビュー

矢口大樹 千葉 95期 A級1班
競輪人生、山あり谷あり。
 順調ならS級から降級するようなことはなかっただろう。しかし、今期はA級の身。それでも、再びS級で戦う日を夢見て懸命に風を切って走るようになった。「最近はなかなか決勝を勝ち切れないですね。まだ力不足ということでしょう。来期も引き続きA級ですが、またS級に戻れるように頑張るだけです」。それでも今期は3V。A級ではケタ違いの先行力を発揮している。

矢口大樹 千葉 95期
 左ヒザを故障したのは5年前。S級1班も視界に捉えて、文字通り順風満帆な競輪選手生活を送っていた時のアクシデントだった。ケガが癒えた後も競走得点で100点前後をキープ。ところが、その100点が限界点となってしまった。
 「ケガをする前に自分なりの練習法を確立していた。ケガ後にその練習を行ったら痛みが出て思うようにいかない。違う方向性でやっても全てが中途半端。ケガをすること自体がアスリートとしての限界なのかな、と」。こう思い始めると練習でもレースでも、どこか集中できてない自分がいた。「勝ってもたまたまと感じたし、負けても悔しくない時もありましたね」。
 そんな矢口に気持ちの変化をもたらしたのが今期のA級降級。自分の競輪人生を見つめ直し、今後について冷静に考えるきっかけになったという。「競輪選手としてバリバリ戦えるのが30代後半までと考えると、あと10年もない。そう思ったら、もう一度、一からやり直してみようと決めたんです」。
 取り組みの一つがウエイトトレーニングのやり方。かつては重いウエイトを挙げていたが、今はケガをしないための体作り程度のウエイトに留める。負荷をかけるのは自転車に乗った場合のみにしている。「9月あたりから成果が出始めました。これからは前を向いて腐らずにやっていきたい。低迷した頃は、人生の小休止。若かったから自分の視野が狭かったのだと気付きましたよ」。競輪人生、山あり谷あり。苦難を乗り越えた者は強い。


岐阜競輪場より