村上博幸 京都・86期・S級S班
絶好調!
何をやっても負ける気がしないとは、村上のことを言うのだろう。4年ぶりのS級S班として、一番目立っているといっても過言ではない。「たまたまです」と謙遜するが、謙遜でないことは、誰もが認める所でもある。
村上博幸 京都・86期
今年初戦の和歌山記念は準決で敗れたものの2勝、2着1回。続く松阪記念は「記念で完全Vは初めて」の快挙。GI「全日本選抜」は1勝に終わったが、すべては展開面でのこと。俊敏な動き、タテ脚は健在どころか、磨きがかかった印象だ。全日本選抜が終わり中4日での参加となった奈良記念。初日は目標不在。3・3バンク、それも奈良で目標不在は厳しい戦いが予想された。しかし、村上は至って冷静だった。最終ホームでは4番手に位置し、バックからまくって圧勝したのだ。展開が早くから動いたからとはいえ、これが追い込みのまくりなのかと驚くほどのスピードを見せたものだった。松阪記念に続く完全優勝だと思わせた。
しかし勝負の世界は甘くない。今年から2日目の優秀競走が廃止され二次予選。特選は単騎だったが今回は、地元の徹底先行・中井俊を目標にできる、最高の組み合わせ。中井が期待にたがわぬ先行でレースを引っ張る。村上は後ろの動きを警戒しながら最終バック。村上が追い込み連勝のはずだった。それが伊藤勝にまくられ、切り替えたが直線は内に詰まり6着。ギリギリ、首の皮一枚で準決への切符を手にした。「最後はコースがなかった…」と言葉少なに振り返った。
不甲斐ない2日目を猛省したのか、準決は同郷の後輩・小笹隼を使って番手まくり。決勝戦は抑えてきた新山響の番手に飛び付き、自ら最高の展開を得た。「近畿地区の記念で結果を残すことができて本当に嬉しい」と口も滑らかだった。この結果、今年は16回走り1着は10回と勝率は62%を超える(奈良記念終了後時点)。確かに昨年末のグランプリも動きは良かった。ただ近畿の4番手、兄・義弘が落車したアクシデントがあっての7着。不本意なグランプリではあったが、本人は十分すぎるほどの手応えを感じていた。
「落車が重なってここ数年は、自分の納得できる練習も競走もできていなかった。今の競輪は脇本君を代表にスピードが全て。あのスピードに対処できる脚を作らなければ太刀打ちできない。そう思って練習してきた」。それが実を結んできたところでもある。目標があれば問題ないが、今年の村上は、例え目標がいなくても、レースの中で柔軟に対応できる力がある。さらに勝ち星を量産するのは確実だが、今年こそはタイトルを獲る、そんな気持ちが全面に出ている気がする。
奈良競輪場より