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佐伯亮輔 岡山 113期 A級2班
「先行一本」に集中

 深くて、暗くて、ひっそり静まりかえった杜のバンクで打鐘を知らせる「カーン」「カーン」という音だけが鳴り響く。3日間その鐘がなった時には必ず先頭にいた男はさらにレースに集中していった。「誰にも主導権は渡さない」。鍛え上げられた自分の脚と心肺機能を信じて自分が最初にゴールするために…。
 梅雨の最中、6月21日から行われた武雄のミッドナイトA級戦。隣の鳥栖や佐世保では大雨警報が出るほどだったがレースの時間帯は不思議と止んでいた。初日は、S級で鳴らした竹田慎一を突っ張り先行で退けて1着。準決は特選組の鶴良生との1周前のもがき合いを制して、同県の先輩内藤敦との直線勝負に持ち込み2着。決勝は、あっさり先頭に立ったが、3番手をV候補筆頭の菊池竣太朗を確保されて最後はのみ込まれて6着に終わった。
 小さい頃から陸上を始めて進学した倉吉西高でも陸上部に入るつもりだった。ただ身体能力に注目した自転車競技部顧問の河田拓也先生に薦められ、ピストに夢中になった。全国大会でも結果を出して名門中央大学に進学。山崎芳仁、佐藤慎太郎らを育てた名伯楽で選手引退後は母校の監督をしている添田広福(49期)さんの指導を受けた。「卒業して教師になるか、自転車競技でまだ可能性を求めてプロの競輪選手になるかは迷っていました。でも高校の顧問の先生や添田監督から『お前ならプロでもやれる』と太鼓判を押してもらって決意した。努力した分、すぐに報われる報酬があるというのも魅力があった」。
 113期として一発合格した後は高校の時から知っていたナショナルチームに所属する河端朋之に師事している。練習もナショナルチームにならって「一本集中」のスピード練習を続ける。800mを集中して一本トップスピードでもがき切る。その成果を本番でも「徹底先行」でぶつけるのだ。海外遠征の多い河端も遠征先からLINE(ライン)で即座にレースで悪かったところをアドバイスしてくれる。高校の時に世界ジュニアでいっしょだった清水裕友や大学でも同期だった宮本隼輔らのS級でも活躍もあり、刺激にはこと欠かない。目標は「脇本(雄太)さんのように先行で圧倒できる選手になること」。20年1月にはS級昇級も決まった。3月の地元周年出場も視野に入れ「先行一本」で力を出し切る構えだ。


武雄競輪場より