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直送!競輪場便り
阪本和也 長崎 A級3班
夢は手の中に
 ひとつの道を極めることは、やはりとてつもなく大変だ。今年デビューした新人もまた、それぞれがさまざまな壁に突き当たり、自分との戦いに挑んでいる。阪本は、現在もS級で活躍する父・正和(70期)の背中を見て育ち、同じ競輪界に飛び込むことを決めた。だが、高校時代まで打ち込んだのは野球。2013年の全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)に、長崎代表・佐世保実業のメンバーとして出場を果たしている。「野球がキツすぎて…。一度は就職しようと思った。でも、競輪選手ももちろん選択肢の中にあった」。高校の野球部の先輩でもある川島勝(89期)に師事し、日本競輪学校(現・日本競輪選手養成所)は在校3位で卒業。プロへのスタートを切った。
 8月24日からの玉野ナイターF2。チャレンジのV候補として参戦した。予選は最終2コーナーから鋭くまくって勝ったが、番手の原敬次(佐賀)が離れてライン決着ができなかったことを悔やんだ。「今の課題は末が甘いこと。それが分かっているから、長い距離の仕掛けをちゅうちょしてしまう。葛藤した時に行くのがプロなのに、初日のレースがまさにそれ」と、勝っても笑顔はなかった。準決勝は地元の太田良政(岡山)を連れて最終ホームからカマシ先行。「ラインで決めることはできたが、後輪が跳ねたりして、乗れている感じはしない」と言いながら、今度はしっかり1周押し切って留飲を下げた。
 デビュー戦の地元・佐世保では完全Vと、好スタートを切った。だが、そこからまだ2か月。戦法も練習方法も確立はしていない。試行錯誤もあるだろう。だが、手をこまねいているわけではない。「練習は基本的にバンク中心。スピードは上がっている実感はある。だから、9月から街道練習に取り組むつもり。持久系を鍛えて、それがどう出るかですね」。自分に向き合い、より強くなる方法を模索している。
 思い描く未来には、期限を設けた。「同期の中には特別昇班したりする選手も出てきたけど、自分は自分のペースで。順調なら2年後にはS級にいる。競輪学校の時から、目標はずっと地元記念Vと言っている。もちろん、父と一緒に走るのも」。今回の玉野決勝戦は、ゴール前で前輪を払われ、初の落車の憂き目に遭った。それでも一度のアクシデントで心は折れない。目指すものは、はっきり見えているのだから。


玉野競輪場より